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8月29日
アベノミクスの正念場来る
IT化促進、大農経営
アベノミクスの中で経済効果を最も期待できるのは規制改革である。規制改革会議は重要項目として 「農業」、「混合医療」、「介護・保育」を取り上げることを決めた。
安倍晋三首相は全産業を先端技術で網羅することによって、日本経済に世界経済をリードする力を再生したいと思っている。ここでは「農業」「混合医療」を取り上げよう。農業ではIT技術を集約した新製品や新装置が開発されている。GPSを装着した無人耕運機は、指定した地域を耕し、また耕作地に設置されたセンサーは、水温、気温、地下温度、水質を確認し、最適な状態を保つことができる。収穫後の産物を品質にしたがって、自動分類して、出荷することも可能だ。
建設、商社、化学等の企業が農業に参入しようとしている。放棄農地や低稼働農地をリースして、少なくても、耕作面積を1自治体の農地全体の3分の1ぐらいの大きさにしたい。問題は農地が細分化されていることだ。農村ではよそ者が農業に参入し、祖先が営々と築いた田畑と里山を変革するのを嫌うので、田畑を集中できない。しかし、現在、農家を守るために国民は毎年1兆円の負担を強いられており(キャノングローバル研究所・山下研究主幹の試算)、もはや財政負担に耐えられない。
農水省は、都道府県ごとに「農地中間管理機構」(管理機構)を創り、既得権益者の集合だった市町村ごとにある農業委員会の許可なしで農地をリースできるようにするつもりだ。農業のIT化のポイントは この管理機構のメンバーに、学識経験者、企業家、消費者を加え、農業関係者を減らすことにある。
大農経営が各地に広がると、国際感覚を持った若者が農業に加わるから、高品質の農産物が増加し、米・野菜の輸出の開拓も可能なはずだ。問題は、それとともに、古いタイプの農家が倒産し、農業協同組合は機能を失うことだ。そのため、新政策への反対運動が強まるだろう。反対をスローガンにして、上位当選した自民党議員もいる。
混合医療で先進的研究
混合医療は、健康保険と先進医療の二階建ての制度である。先進医療は高額であって普通の人は利用できないが、その治療は安全だという完全な証明がない。患者は高額な治療費を支払ってリスクを覚悟して、新治療に挑むのである。挑戦する患者が増えて、安全性が証明され、かつ治療費コストが低下した時、健康保険の対象になるだろう。
混合医療制度が拡大すると、優れた医療機関には超一流の頭脳が集中し、十分な研究費に支えられて、幅広く先進治療を研究して、世界水準を抜く成果を挙げるだろう。日本の医療は大型輸出産業に成長し、世界の医学研究センターの地位を狙える。なお、医師に対する充実した過失保険制度が必要であり、それがなければ、研究者が激減する。
しかし混合医療では、先進診療と保険診療に関わる医療機関や医師間に格差が生まれ、また万民平等の、世界に冠たる健康保険制度が崩れるという懸念を表明して、強力な政治団体の医師会は反対だ。
強力な既得権益者に勝つことが、安倍首相に課せられた最大の使命である。