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6月6日
新帝国・中国のアフリカ進出
貿易額は日本の8倍
ローマや元のような大帝国は、国境が地球の果てまで広がろうとする。アメリカは、民主主義・人権という価値と強大な軍事力を利用して、世界覇権に挑んだが、中東での敗北と中国の登場によって、大帝国への夢を破られた。
次の王者を狙う中国の最大の悩みは、経済の高成長期が終焉に近づいていることだ。それは、貯蓄率が約50%と異常に高いので、非効率な公共事業や設備過剰をもつ産業へ、資金投資が続いているためだ。
賃金を引き上げるべきであるが、賃金の上昇テンポが早すぎると、倒産企業が続出し、失業者数が膨大になり、深刻な社会問題が発生する。中国政府は、緩やかな賃金上昇率を保ち、福祉支出を増やし、かつ過剰蓄積の外貨を長期的な発展のために使いたい。
長期的発展の阻害要因は、エネルギー、鉱物資源、農産物等の不足であって、豊かな資源はアフリカに存在している。その開発には現地の人脈形成と大規模な投資が必要だ。
今世紀に入る頃から、 中国の一流大学では、アフリカの留学生が急増し、立派な留学生会館が多くなった。アフリカの21カ所に孔子学院(中国語学校)が創られ、毎年数千人の学生が選ばれ、中国政府の負担で留学している。将来、その中からアフリカ各国政府の幹部が育ち、中国との経済関係を深めるだろう。
胡錦濤前国家主席は、就任中にアフリカを4回訪問し、18カ国を訪ねた。習近平氏は国家主席に就任すると、最初のロシア訪問に続いてアフリカ3カ国を訪問した。彼としては7回目の訪問であり、人脈造りの体制は万全である。日本は小泉総理以降、首相訪問がない。
中国のアフリカに対する無償援助や銀行融資の額は、世界では飛び抜けて大きい。アフリカの資源国で、内戦が終結するや否や、中国の投資が始まると云われている。今月始め、横浜で開催された日本主催の「アフリカ開発会議」では、日本は今後5年間で官民合わせて約3兆円の大型な投融資額を決めたが、中国はそれ以上の資金をすでに10年近くにわたって投入し、アフリカ経済をリードしてきた。対アフリカ貿易額は日本の8倍に達し、世界一の地位を占めた。
永住者が成長支える
中国のアフリカ投融資は独特な視点に立っている。①内政に干渉しない。人権が守られていない独裁国でも、資源開発投資に応じ、必要なインフラも整備する②開発の対象には、都市住宅、学校・教育、病院、農業指導などを含む③相手方政府と密接な関係を保ち、投資の安全性を守る―。
中国人が工事現場で働き、また中国製品の輸出が増え、中華街が生まれ、現地の雇用を奪うという問題がある。しかし、今後アフリカと中国との経済関係が深まると、多くの中国人が永住して現地経済を握り、効率が良い柔らかな中国経済圏をつくり、経済成長を支えるだろう。すでに約100万人の中国人がアフリカに住み、経済活動に励んでいる。中国・新帝国主義が機能しつつあると言えよう。
日本は相当出遅れている。在住者は7千人しかいない。まず、数カ国に的を絞って、現地のニーズに適した製品を開発し、それを現地生産することが重要である。