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2月28日
北方領土の「引き分け」は重要
2島返還で経済交流
ソ連は、1945年8月8日、日ソ中立条約を破って日本に宣戦布告し、ソ連軍は日本がポツダム宣言を受諾した8月15日の後に北方領土3島へ上陸し、ミズリー号における日本の降伏調印式(9月2日)が終わった後に歯舞群島を攻め、9月5日に4島全てを占領して、そのまま返さない。その上、日本の魚加工技術を吸収するため、技術者を4年間近くも帰国させなかった。日本人はソ連に対してカンカンに怒っている。
私は1990年頃モスクワに頻繁に出張していた。ソ連崩壊直後、モスクワの国際経済研究所の日本担当研究員に対し、日本人の怒りを話した。彼は、「全てのロシア人が北方4島をロシア領だと信じている。改めて北方4島に関する資料を集めるから、調査費を寄付してくれ」という。当時のロシア経済は混乱し、研究所の予算が大幅にカットされていた。私は彼の提案に応じた。
彼によると、国際法の観点から、北方領土を日本領とするには無理がある。しかし、50年頃、ソ連の日本研究者の間では、歯舞・色丹は昔から日本領であり、国後・択捉は千島列島の一部であってソ連領だというコンセンサスが形成されつつあったという。
実際、その頃、ソ連は工業が停滞していたので、日本に北方領土の2島を返還し、平和条約を結んで経済交流を深めたかった。日本政府はこの話に乗ろうとしたが、米ソ対立が激化しており、アメリカ政府は技術大国の日本がソ連と密接になることに反対であって、日本政府に対して4島返還という無理な要求に固執するよう指示し、日ソの関係改善を妨げた。孫崎享さんによると、日本人はソ連嫌いであるから、北方領土の完全返還に凝り固まり、ソ連と敵対すべしというアメリカの要求に易々と乗ってしまった。
ところが、今や、米ソ対立の時代から、米中対立の時代に移り、アメリカ政府は日ロ経済が一体となって、極東における中国や北朝鮮に対抗する大きな政治・経済勢力に発展するのは望ましいと考えるようになった。
棘を抜きたいロシア
一方、ロシア政府は経済成長力が高いアジア諸国との経済関係を深めて、天然ガスの輸出市場を拡大し、ウラジオストクに、外資を導入して、自動車工業やIT産業を起こし、産業構造を高度化したい。それには、日本の協力が必要であり、どうしても、日ロ両国の喉に刺さっている棘を抜きたい。プーチンは領土問題について「引き分け」でも構わないという考えらしい。森元首相も引き分けを期待しているようだ。
日本にとっては2島返還でも成功だ。それは占領された領土を交渉によって取り戻すことであり、沖縄返還に次ぐ快挙と言えよう。ところで、返還後には問題が多い。島のロシア人は日本に帰化するか、移民になるかの選択を迫られ、不満が充満するだろう。
対応策として、まず福祉政策の充実、日本語教育、北海道におけるロシア語標示、島の自治権、ロシア語テロップ付き地方テレビ等のソフトの整備、インフラの充実、漁業の近代化や観光業の育成が必要である。返還に伴う費用は相当に大きい。