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5月9日
中国、愛国心頼みの腐敗防止
汚職が正常競争阻害
中国経済は、汚職、所得格差、環境破壊という深刻な問題に直面しており、これを克服するには、血の滲むような努力が必要だ。
もともと、どの国の計画経済にも汚職がつきものだった。中国の国有企業では経営を監視する機構がないので、生産性が向上せず、赤字累積しているが、経営責任を追求されず、幹部は地方政府や中央政府の中枢ポストに出世している。
また、国有企業は、膨大な数の関連企業に下請け発注し、その際、賄賂の授受や手抜き工事の見逃しが恒常化した。中央や地方政府の幹部の親族が下請け企業の経営者に収まって、巨額な所得を欧米の銀行の秘密口座に貯蓄する例が多い。国有企業の低生産性が、中国経済の成長の障害になってきた。
中国経済は、約30年前から市場経済体制に変わり、許認可権限が地方政府に分散されるとともに、大型な汚職が全国に広がった。
典型的な例は、地方政府が農地や住宅地の使用権を安く買い上げて、工場団地、住宅団地、ショッピングセンター等の建設デベロッパーに高値で売却し、獲得した利益を有力党員や地方政府の幹部に厚く、下級職員には薄く配分するのである。
土地は公有であるから、住民が買収に対抗すれば、警官と暴力団が一体となった組織に逮捕される。デベロッパーは、国有銀行の低利融資によって土地買収や開発資金を調達しているから、国家スケールの汚職といえる。無駄な団地の建設が増えている。
全国至る所で見られるのは、官僚が重要な情報を民間企業に流したり、不正に許認可を与えたりして、賄賂を受け取るという汚職であって、正常な企業間競争が阻害されている。
ところで、貧富の差は拡大する一方である。都市で育った民工の人口は1億人をはるかに越えたが、農村籍であるから、生活している都市では住宅を買えず、公立学校に入学できず、社会保障がひどく差別されている。彼らは両親の代から低賃金で働き、中国経済の高成長を支えてきたが、差別・搾取され続けた。方々の都市で暴動が頻発し、沿岸地方の工業地帯では、民工が主体になって賃上げの山猫ストを起こし、治安が乱れている。
反日あおり支持固め
これらの問題の解決は、共産党内の革新派が保守派を押さえ、共産党独裁の統治システムを改革するしかない。それには国民の愛国心と強力な支持が必要であり、そのため、習近平氏は「中華民族の夢」を語ると同時に、激しい日本批判を繰り返し、政権基盤を固めている。
中国は多民族が集合した国家であって、国民は団結力を欠いていたが、日本軍が昭和の始めに約20年にわたって中国を侵略した時、国民は痛烈な屈辱感を味わい、歴史上初めて愛国心に目覚め、抗日運動が拡大した。「超大国再興の夢」と「反日」は愛国心を刺激する絶好のテーマだ。
日本でも愛国心が高まり、靖国参拝の国会議員が激増したが、両国の愛国心が熱しすぎると、領土問題を棚上げにする機会を失し、不幸を招く。冷静さが必要だ。