静岡新聞論壇

6月20日

女性が日本経済を救う

就業率上昇でGDP増

安倍首相が「女性の活躍」を成長戦略の中軸に据えると宣言した。女性の就業率(15歳から64歳の女性人口のうち働いている人の割合)は上昇傾向を辿って60%にまで達したが、さらに男性並みの80%まで引き上げるべきだろう。

働く人が増えると、それに応じて経済活動も活発になるはず。女性就業者が80%に達すると、GDPは17%も増加するという試算もある(ゴールドマン・サックス証券)。経済が成長し、税収が大幅に増大することは確かだ。

政府が、税収の増加分を保育園の充実、小児科産婦人科医の増加、男女平等の育児休暇支援、両親の介護に対する補助等に使えば、人口の減少傾向は弱まり、子供のための消費が増え、経済はさらに好調になるだろう。

ところで、女性が男性と同じように働くためには、社会と家庭の変革が必要である。過去の日本では、男性は会社人間になり、家庭を少しも顧みずに夜遅くまで残業し、日曜出勤をすることも多かった。

女性は専業主婦であって、安月給で生活をやりくりして子供を育てた。女性の人生は夫の働きを支え、夫は人生を会社に捧げて、豊かな日本が生まれた。生活に余裕ができると、女性は男性並の社会活動をしたいという意欲が強まる。高賃金国で女性の就業率が高いのはそのためだ。

ところが、日本の企業では男性優先の慣習が消えない。企業は社員が定年まで勤めるという前提で長期的な教育プログラムを実施している。色々な部署への異動を繰り返すのも教育である。多くの仕事を経験させて、会社組織が如何にして動いているかを身をもって知り、またそれぞれの社員が会社組織全体に友人の網を作り、情報の伝達や合意の形成を効率化させるためだ。

女性社員は、結婚・出産や家庭の事情で退職する可能性が大きいから、よそ者扱いされ、パートの仕事を割り当てた。ところが、今や、女性の教育水準は男性を上回り、言論界や学会でも活発に活躍するようになった。

家庭や職場の改善必要

企業は女性を増やし、男女の待遇を同じにしたが、やる気のある女性にとっては、まだ大きな差別が残っている。安倍首相は育児休暇3年を目標にしているが、女性は働き盛りの時、3年間の休暇を取ると、同僚の男性や独身女性と仕事上の能力格差が生まれ、定年まで仕事や待遇の格差が消えない。

仕事に一生を賭けている女性には、結婚を諦めたり、職場で地位を築いた後に(40歳近くなって)、1人の子を出産して育てる人が少なくない。女性の社会的地位の向上は、少子化という大きな代償を伴った。

女性の働く意欲と出生率の向上を両立させるには、まず、家庭内の仕事を男女平等にして、同じ期間の育児休暇を取らせ、つぎに、育児休暇を短くして、すぐ職場に復帰して能力を伸ばすという選択ができるように、保育園を充実させることが必要である。どんな時代でも、経済成長の源泉は社会改革にある。

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