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8月8日
人口圧力でアラブ内戦続く
貧富の差や宗派対立
アラブ世界の内戦や内乱が終わらない。その原因は人口が過去40年間に3倍に増え、平均寿命が25年も延び、若者の失業者が溢れることにある。
ロンドン・エコノミストによると、イラクでは小学校卒の失業率は約20%、働く意欲を持たないニートが約60%に達し、専門学校は失業者を送り出すだけだ。アラブ世界では性の戒律が厳しく、結婚には住宅が必要であるが、それを持てない人が激増し、社会不安が増している。
サウジアラビアのような豊かな産油国では国王が石油収入の一部を国民の補助に充て、また教育投資を増やし、若者の識字率が40年間で100%近くになったが、教育の中心は宗教であって数学・科学の知識を欠き、また中小製造業が未発達であるから、仮に知識があっても利用できる職業がない。
その上、人口が膨張して、国民に配分する資金が不足し、また王族の財政が苦しくなったため、アラブの貧困国からの移民を締め出し、サービス業に自国民を雇い始めた結果、アラブ諸国の貧富の差は一層拡大している。
貧民が多い国では「アラブの春」によって独裁政権が倒されたが、どの新政権も雇用政策を実施する能力がない。若者達は幸福なイスラム教国家を建設する夢を追い、激しい政治闘争を起こしているが、それと同時に熾烈な指導権争いが生まれ、多くの国でスンニ、シーア両派の対決や部族間の宿命的対立が内戦に拡大している。
シリアは人為的につくられた国であるから国民意識が弱く、少数派のアラウィ派(シーアの一派)がアサド独裁政権を支え、激しい内戦が続いている。反政府軍の中で有力なのはスンニ派原理主義者(サラフィスト)であって、アラブ湾岸地域に強力イスラム国家を建設するため、貧しい国の殉教者がシリアに向かって続々と集まっている。
日本外交の重要テーマに
アサド政権に弾圧されているスンニ派には多種類の反乱軍が存在し、部族的対立の恨みが重なり、同じ部族がいるイラクとの国境を自由に行き来して戦っている。彼らは信条や部族が異なる集団であるから、それぞれがスンニ派産油国や欧米諸国からバラバラに武器を仕入れて、戦闘本部もなくめいめい勝手に戦っており、武器の一部はサラフィストに売られているので、激しい内戦が終わらない。
シリアはエネルギーの大宝庫であるが、アラブは反米・反イスラエルの国ばかりであり、また、国家が崩壊してソマリア化しているので、欧米大国が介入するには問題が大きすぎる。貧しい非産油国ではサラフィストの力が増し、また大国エジプトではイスラム教徒と世俗派が内戦に向かっており、中東で最も近代化したトルコでも対立が起きた。
21世紀は経済や軍事の中心が大西洋から太平洋に移り、その間に発生した軍事的真空がイスラム原理主義によって埋められつつあり、今後、西アフリカから中東・西域を通って極東まで対立・内戦の種が絶えないだろう。日本外交にとって、中国と並ぶ重要なテーマになってきた。