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3月14日
アベノミクス成功の条件
規制改革と成長産業育成
アベノミクスの第1段階は見事な成功である。政府は2%のインフレ目標政策の実施を声明し、その強力な支持者を日銀総裁(黒田東彦氏)と副総裁(岩田規久男氏)の候補者に提示して、新体制を整えた。
欧米では、いずれの国も巨額な財政赤字を抱えているので、景気刺激政策の主体は政府から中央銀行に移った。 アメリカでは、連銀(中央銀行)は失業率が6.5%になるまで、住宅抵当証券を無制限に買い続ける計画であり、すでにその成果が現れて住宅投資が増加し、シェールガス開発の拡大と相俟って景気は上昇している。ユーロ圏では、欧州中央銀行が財政破綻国の国債を一定条件の下で無制限に買い上げるという方針を決め、ユーロを守る決意を示した。
日銀も景気刺激のため、今後、市場から大量な長期国債を購入して、長期金利をさらに引き下げるつもりだ。アメリカでは景気上昇とともに先行き金利高が予想されるのに対し、日本では、今後当分の間、金利が低いだろう。そのため円売り・ドル買いが進み、また日本の貿易赤字が続いたので、円安が加速した。
円安は輸出企業に高収益をもたらし、日本経済に明るさが増した。そのため、世界の過剰資金は日本の株式市場に集まり、外人投資によって株価が年初から15%近くも上昇した。こうして景況感は好転したが、実体経済が改善したわけではない。
政府は景気を支えるため大型補正予算を決め、それだけでは不足であるから、個人消費の増加を狙い、企業に大幅賃上げを要請したが、期待に沿える企業は少ない。製造業では、工場が海外移転しているので、円安になったからといって、輸出量が急増しない。
そこで、アベノミクスの「第3の矢」である規制改革と成長産業の育成が必要である。成長産業の代表である医療、農業、介護、教育等の分野では規制改革が不可欠だ。例えば、混合治療が認められれば、先端治療の臨床例が増え、日本は医療先進国になれる。また伊豆半島等に医療特区をつくり、日本人や外人の医師・看護師が働き、アジアの資産家が先端技術による治療や長期療養に来日すると、医療が大きな輸出産業になり、また先端医療機械産業も伸びる。
農業の国際競争力強化へ
狭い日本では、土地は一種の公共物であり、田畑を耕作放置したり、古い技術と遅れた経営に頼っている農家は、農地を所有する資格がないはずだ。若い人が自由に農業に参入して、IT技術を活用して、省力化や農産物の高級化を実現し、さらに海外マーケットを開拓すれば、農業は輸出産業として蘇るはずだ。
日本が中国や韓国に領土問題で攻め込まれている原因の一つは、経済が弱くなったことにある。日本経済を強くする最後のチャンスがアベノミクスであり、これに失敗すれば、日本は経済弱国に転落するだろう。政府は、領土で盛り上がった国民の危機感とナショナリズムを味方に付け、農協、医師会、官僚機構、社会保障の過剰な受益者などの既得権益者と、日本の生存を懸けて戦うべき時である。