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4月11日
「異次元・金融政策」の成功条件
まずは産業の構造改革
日本銀行は、2%のインフレを達成するために、通貨量を2年間で2倍にするという「驚天動地」の金融政策を発表した。市場は直ちに反応して、株価が急騰し、円安が一段と進み、長期国債の金利は乱高下しながら未曾有の低金利(長期国債価格の上昇)になった。
銀行は、過去、過剰資金を専ら国債に運用してきたが、国債金利が低下すると利鞘が縮小して経営困難になるから、今後、融資の拡大が必要である。幸い、手持ち国債の時価が上昇したので、ベンチャー企業に対するリスクある融資が可能である。
企業は手持ちの株式や不動産の時価が上昇して財務内容が改善し、かつ株高・円安によって景気感が明るくなったので、設備投資と雇用の拡大が期待される。個人は低金利ローンを利用して、物価上昇前に住宅や耐久消費財を買い急ぐかもしれない。輸出も増えるだろう。日銀の狙いはそこにある。
ところが、古いタイプの産業は過剰な設備と雇用に悩んでおり、主たる工場は海外に移転し、また消費者には直ぐに欲しいという物がなく、住宅は700万戸も余っている。実体経済が活況になるには古いタイプの産業が縮小し、そこの従業員が教育訓練を受けて新成長産業に移転し、新需要の創造に加わるという構造改革が必要である。
日本企業はロボット技術ではASIMOやAIBO等の高級品を開発し、工場用ロボットの技術も世界水準を抜いている。これに対して、アメリカでは家庭用掃除ロボット等の大衆品が大量生産されて普及し、また東京電力福島第一原発事故ではアメリカ製ロボットが放射能で汚染された空間で活躍した。これに比べると、日本のロボット産業はガラパゴス化しているようだ。
現在の代表的な成長産業は医療・介護産業であって、過去10年間で雇用は40%近く伸びたが、同じ期間で1人当たりの賃金は13%も低下し、デフレ経済を象徴する現象だった。その原因は、パートをはじめとする非正規社員が多くなり、その賃金は正社員の約半分という低さのためだ。
新規需要の創造不可欠
もし、日本のロボット産業が、アメリカのように日常生活で使うありふれたロボットを供給するという戦術を採用すれば、高齢者を介護する人の作業を補助する多様な低価格ロボットを生産できるはずだ。それによって、介護士不足の要因の一つである腰痛が解消されるだろう。
普通、成長産業では新規企業の参入が相次ぎ、雇用が拡大し、優れた人材が集まり、激しい競争の中で新技術が次々に開発されるものだ。医療・介護産業でも規制が緩和され、また今後低利資金が豊富に供給されれば、新規参入者が増え、競争が激化して多様なロボット投資が起こるだろう。その結果、生産性が向上して、正規社員が増え、賃金が上昇するはずだ。投資と消費が増加すれば、デフレ経済は成長経済に変わる。
日銀の金融超緩和という大博打政策が成功するためには、企業が高齢化社会の多様なニーズを発見して新規需要を創造することも必要である。