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8月28日
地方分権を巡る闘争
官僚政治 破壊できるか
与野党を問わず、政治家はこぞって官僚を叩いている。官僚は日本経済の高度成長期に「政治家は選挙区の利益代表、我々が日本の利益代表」と胸を張ったが、日本経済が衰退すると、その巧みな保身術や天下りばかりが目立った。政治家はこの機を逃さず、「官僚は省庁の利益代表、我々が日本の利益代表だ」、「日本を官僚主導から政治家主導の国家に変える」と叫んでいる。
官僚支配の統治システムが、現在まで存続できたのは、時代の変化に遅れながらも、少しずつ改善されたからだ。官僚の支配の悪い例として、しばしばあげられたのは、大都市を中心として保育園が不足し、幼稚園が過剰であるが、それぞれ準拠する法律と所管官庁が異なるから、解決できないことだった。しかし、幼児数が減少した上、幼稚園における時間外保育など、幼保一体化が徐々に進み、待機児童の問題は、最近かなり解決された。
また、官僚は紐付き補助金を利用して、長い間、地方自治体の行政に介入したが、その度合いが少しずつ減ってきた。例えば、まちづくり計画では、かっては道路改修、街灯整備と細かい項目毎に補助金が交付されたが、最近では街づくりで一括され、使い勝手が良くなった。
地方自治体が補助金を自由に使えるようになれば、住民の要望を吸収し、きめ細かい行政が実施され、政治が住民に近づくはずだ。成熟した社会では、政策の中心が福祉に移るから、地方分権が適している。自民党と民主党はこのことをよく知っており、地方分権を進めると云う。全国知事会も論争に参加した。
日本の統治システムに関して、民主党の考え方では、政治家主導の中央政府と大型基礎自治体(市町村)の2層構造にする。補助金を一括して基礎自治体に交付し、中央政府の主たる役割は外交と国防になる。自民党は、中央政府、道州政府、市町村の3層構造にし、道州政府に対して福祉や教育等の権限と財源を大幅に委譲すべきだと思っている。
両党とも、地方分権制によって、官僚政治を破壊すと云うが、果たして可能だろうか。地方分権になると、国会では専ら外交・防衛と金融・財政等の基本政策が論議される。その結果、選挙区の利益を国家政策や予算に反映させ、票田を固めるという国会議員の伝統的な政治活動の基盤が消え、後援会組織が弱くなり、その上、議員数が大幅に減る。多くの国会議員の心は地方分権に反対だろう。
政治家が真剣に学ぶ時代
地方自治体は複雑な立場だ。両党の案では府県がなくなり、民主党案では市町村の大合併が必要だ。そんなダイナミックな改革に反対する自治体が少なくない。
官僚は中央集権体制を守るために理論武装し、猛烈に反対するだろう。官僚の力は侮れない。北朝鮮では、失職を恐れる官僚の力によって、独裁政権が永続している。
自民・民主両党の地方分権制では、中央政府が地方をコントロールする源は、地方交付税と一括交付の補助金を地方に配分する権限になり、内閣府か総務省がその権限を握るだろう。全国知事会では、内政は道州政府と基礎自治体に任せるべきであり、それらの役割分担には、地方と政府が対等に論議し、決定できる制度を創設すべきだという。その会議は総務省が担当になり、多分、テーマや結論の扱い方を決めるだろう。
こうして、将来、内閣府や総務省の官僚が権力を備え、長期政権を支える可能性がある。その時、地方分権制になっていても、意志決定に透明性を欠き、失敗の責任を取ろうとしない官僚政治が残るだろう。それを防ぐにはモラルでも理論でも、官僚を圧倒する実力ある政治家が増えることが何よりも重要だ。政治家が真剣に学ぶべき時代になった。