静岡新聞論壇

1月15日

明るい社会への展望と政策

消費税財源に国民不安軽減

日本の産業は国際化しているから、アメリカの経済危機の影響が瞬く間に津波のように押し寄せて、倒産と失業が増え、国中に暗い気分が広がり、今後、消費が一層落ち込み、日本経済は深刻な不況に突入しそうだ。それを避けるためには、国民を明るい気持ちにさせることが重要だ。

麻生内閣の経済危機に対する基本的な認識は間違っていなかった。麻生内閣は、昨年、総額2兆円の定額支給金の支給によって、気分を明るくしようとした。それと同時に、景気が回復した後(3年後)消費税を引き上げることを声明した。その財源によって社会保障が充実し、国民の不安が減るはずだ。

この考え方は悪くないが、私は消費税を大幅に引き上げることを決めるべきだったと思う。例えば、3年後から消費税を毎年引き揚げて、10年先には15%にするのである。 3年後には、景気が底を打つだろう。その頃から、毎年、消費税が引き揚げられれば、継続的に買い急ぎが起きるはずだ。現在のように値下がりが激しかった後には、高額な大型耐久消費財需要が盛り上がるに違いない。景気上昇が持続するだろう。

消費税の引き上げによる税収増は、明るい社会を実現するために使われる。その内容こそ国民の気持ちを明るくするはずだ。

暗い気分の要因はまず少子化・高齢化である。これから働く人が減り、働かない人が増えるから、日本経済は確実に衰退しする。また過疎地が増え、また殆どすべての都市は小売店が減り、寂しくなる。私達は次第に貧しくなるかもしれない。是非とも出生率を高めたい。

つぎの要因は、日本経済の衰えだ。かって半導体や液晶は日本企業の得意分野だったが、今や韓国や台湾の企業の方が強くなった。ナノテク、バイオ、ウェブ等の先端技術の分野ではアメリカに敵わない。工業の総合力では、間もなく中国に抜かれそうだ。

日本経済の生産性は80年代には世界でトップだったが、今やランキングは20位近くまで転落した。日本経済が再び強くなるためには、研究開発力の向上が必要だ。

こうした目標を達成するために、大胆な政策が要請される。出生率向上のために、例えば、男女ともに2年間ぐらいの出産・育児休暇をとれる、義務教育については父兄の負担ゼロにし、公立高校や国立大学の授業料をゼロにすると云った制度を創り、育児・教育の負担を軽くするのだ。そうすれば、経済的余裕がない家庭の子女も、能力があれば最高の教育を受けることが出来る。

経済危機こそ大きな議論を

優秀な留学生も無料にすべきだろう。優れた頭脳が先端技術の開発に携わるようにするのだ。

育児・教育の費用を国家が負担して、子供が増えれば大成功だ。彼等が成人すれば、40年間以上働き、日本経済の生産性を高め、消費を増やし、さらに税金を負担してくれる。彼等の力によって、日本経済は成長するだろう。その時、国家は育児や教育に投入した金額以上を、所得税や消費税として回収できる。

その税収を介護施設の充実に向けて、老後の不安を軽減することが可能だ。そうすれば、高年齢の消費が増えるに違いない。

政府は明るい未来を展望すべきだが、政府の力は惨めなほど弱い。定額給付金については、麻生首相が貰うかどうかといったような小さな問題に焦点が集まり、私達の気持ちはかえって暗くなった。消費税増税については、大衆課税かどうか、財政改革が先ではないかといった議論が主流である。現在のような経済危機の時には、政治家は独自の思想に基づいて、大きな議論を展開すべきである。

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