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3月5日
日本も文化的サービス大国に
不況で製造業経済に打撃
世界的大不況の震源地はアメリカであるが、日本経済はアメリカ以上の大きな被害を被った。昨年10~12月期を見ると経済成長率(年率換算)はアメリカがマイナス6%、日本がマイナス13%であり、製造業生産はアメリカがマイナス5%、日本がマイナス12%だ。
この差は日本経済が製造業に偏り過ぎ、その製品の多くが輸出されているためだ。世界不況の影響を強く受けて1月の輸出はマイナス45%(年率)も落ち込み大打撃だった。これに対してアメリカ経済ではサービス業が発達し、製造業のウエイトが小さい。それは製造業都市・浜松市の受けた打撃が、サービス業都市・旧静岡市よりかなり大きかったのと似ている。
アメリカ経済は消費によって成長し、輸入が拡大の一途を辿ってきたが、今後当分の間、国民は借り過ぎたローンを返済するため節約するから、輸入は減るだろう。それとともに、日本は輸出主導の成長から内需による成長に転換せざるを得ない。財政が破綻しており、公共事業を増やせないという状況下で、内需を増やす方法は何か。
その一つは新技術製品の開発であって、家庭用太陽光発電、エネルギー効率が良い住宅、電氣自動車等はその好例だ。もう1つはレベルが高い文化的なサービス業の成長である。アメリカでは多様なサービス業が発達しており、「大学都市産業」はその一例である。
アメリカにはレベルの高い大学が多く、そこには世界各地から留学生や教授・研究員が集まり、また国際的な学会やシンポジュームが頻繁に開かれている。ボストンを始めとして、樹木が生い茂り、美しい景観に囲まれた大学都市が各地で成長し、文化人が多く住んでいる。一流の交響楽団の本拠となり、名画を収蔵している美術館がある。豊かなアメリカ人や外国人が多様な消費支出をして、内需を支えている
日本には大学は多いが、大学都市が少なく、内需を生み出す力を欠いている。その原因は大学にあるようだ。
経済学の分野ではアメリカの学説が日本を制覇し、用語はカタカナ英語が多く、論文はアメリカの学説の引用で埋まっている。日本にも一流学者がいるはずであるが、彼等の学説は殆ど引用されない。学者は学歴に留学したアメリカの大学名だけを記し、アメリカの学説の紹介だけで満足している人が少なくない。
大学都市産業で内需拡大を
先日、静大の中国人留学生に会った。彼女は卒業後まず東京の有名大学の大学院に進学し、博士号はアメリカでとりたいという。私達は人材と内需を逃しているのだ。
明治の学者は偉かった。欧米の経済学を丹念に翻訳して経済、資本、価格等、沢山の単語を創った。明治の末期に10万人近くの中国人留学生が来日し、和製単語を通じて欧米の社会科学を学んだ。
神田周辺には中華料理店が並び、留学生の熱気が溢れ、ここから孫文等アジアの思想家や革命家が育った。和製単語の多くはそのまま中国語になった。「人民共和国」も和製単語だ。神田は欧米の学問を和製単語で学ぶアジア最大の大学都市だった。
ところが、現在はアメリカの経済学がカタカナ英語で教えられ、意欲ある日本人学生や留学生はそれによってアメリカ経済学に魅力を感じてアメリカの大学院へ進学し、文化的な雰囲気に満ちた大学都市で長い期間生活し、なかには永住する人もいる。日本の大学はまるでアメリカの大学都市のPR係だ。
世界経済は変った。日本は製造業大国から文化的サービス大国に変わりたい。大学の役割が一段と高まってきた。