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3月15日
株安を誘引する政治家
世界経済は破滅の瀬戸際
世界経済は深い谷底へ転落している。アメリカ経済は刻一刻と大不況に落ち込んでいる。住宅ローンを返済できない所帯数が2000万戸に迫り、住宅価格が低下し続けている。その結果、金融機関の不良債権は、間もなく2兆ドルを越え、自己資本総額をオーバーしそうだ。
銀行がローンを絞っているので、住宅や自動車が売れない。赤字企業が増え、金融機関の不良債権がさらに膨張し、解雇が拡大している。今年の中頃には、銀行危機が深まり、主要銀行は実質的な国家管理におかれるかもしれない。オバマ政権は約8000億ドルの緊急経済対策を決めたが、規模が小さ過ぎて到底この経済危機を乗り切れないだろう。
イギリス、スペイン、東欧諸国等はアメリカ以上の経済危機に喘いでおり、世界経済は破滅の瀬戸際にあると云えよう。
日本経済も危ない。輸出依存の成長だったので、アメリカ経済の転落と同時に、景気は垂直的に下降し、経済成長率が2桁のマイナスになった。気が弱い人なら、失神しそうな悪い経済数値が続々と発表されている。
さすがに政治家はタフであり、麻生総理は慌てる様子もない。定額給付金について、「当初は生活困窮者を救う目的だったので遠慮するつもりだった。しかし、今や景気刺激が目的になった。喜んで頂戴して使うつもりだ」と軽快に語った。
しかし、事態は逆だ。昨年秋に景気が突然失速したので、定額給付金は景気刺激のカンフル剤だったはずだ。ところが税金の無駄づかいとか、選挙対策といった理由で評判が悪く、野党は首相がそれを受け取るかどうかという些細な問題を取り上げ、審議を引き延ばした。
そうしている間に景気は加速度的に悪化して、非正規雇用者が解雇され、賃金カットが相次いだ。現在、定額給付金が喜ばれているのは、国民の生活がそれだけ苦しくなったからだ。
中川元財務大臣はまるで鈍感だった。世界不況の対策を真剣に議論するG7の国際会議に出席して、その直後の記者会見に泥酔状態で現れた。世界各国が固唾を呑んでこの会議の推移を見守っていた時期だった。この泥酔事件は世界に発信された。
ワインの席に大新聞の女性記者が同席していたそうだ。しかし彼女は「泥酔記事」を送らなかったので、日本のジャーナリズムは政府とグルだという評判が立った。国際証券市場では、「日本売り」が活発になり、株安と円安が進んだ。
当分続きそうな「日本売り」
政治家の大胆な行動が続いた。鳩山総務大臣は日本郵政式会社の経営に介入した。政府がその大株主であるが、日本郵政は独立の会社であり、社長が全責任を背負っている。かんぽの旅の一括売却や中央郵便局の高層ビル化といった重要な経営戦略に関して、突然、大臣から待ったをかけられたのでは、社長の権威は丸潰れであり、経営が保たない。
鳩山大臣は郵政の民営化に反対論者である。また民営化を潰す努力をすれば、郵政関係者の支持が得られ、選挙に有利だという判断が働いたらしい。それにしても唐突な介入であって、政治家に対する不信が深まった。
その上、選挙前というタイミングに、野党党首である小沢さんの公設秘書が逮捕された。また漆間官房副長官が新聞記者に対して、政治献金事件を巡る検察の動きを話したという。彼には官僚機構の要にいるという自覚が欠けており、気が緩みきっている証拠だ。
未曾有の大不況の最中に、政府と政治はダッチロール状態に落ち込んでおり、当分「日本売り」が続きそうだ。後世の経済史家は暢気さ加減にあきれるだろう。