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2月19日
駆け抜けた「トヨタショック」
2千億円の赤字に転落
トヨタの営業利益は昨年度の約2兆円から、今年度には約2000億円の赤字に転落した。トヨタの経営は非常に優れ、大きな書店では「トヨタ経営の研究」といった類の本が沢山並んでいる。「トヨタ研究」によって博士になった経営学者が少なくない。
トヨタ式経営のポイントは、まず需要に応じて生産台数を弾力的に変更できることだ。系列部品メーカーの生産、トヨタの工場における組立、販売店への輸送といった流れがまるで生き物のように動き、需要台数に応じてスムースに生産するシステムが出来上がっている。これが有名なカンバン方式である。
つぎにトヨタと部品メーカーは技術的に一体化しており、技術者が相互に出向して最先端技術を交流して、部品の性能を高めている。また、「カイゼン」活動が活発であり、工場現場の提案が、機械の設計や工場のレイアウトの変更にまで反映されのだ。
世界のどの企業もトヨタに追いつけないと言われた。それはカンバン方式、部品メーカーとの一体化、カイゼン等は、何十年もかけて築き上げたソフトであって、工場を見学したり、理論を研究しただけでは絶対に真似できないからだ。世界市場では当分トヨタの天下が続くと考えられていた。
そのトヨタが突然赤字に落ち込むとともに、次のようないろいろな問題が意識され、「トヨタショック」が日本を駆け抜けた。まず第1にトヨタが対応できなかった程、世界同時不況のスケールが大きくかつ底が深いことだ。
第2にトヨタですら生産・販売の拠点がアメリカに移ると、現地工場の経営が変わったことだ。トヨタの特意分野は中型車であり、また多様な需要に応じられように、生産ラインでは多車種が混流し、そこには多能工が配置されていた。ところが大型高級車の好調な売り上げが続いたので、生産の中軸を大型車に移し、専用の生産ラインをつくった。需要の変化に対応できないアメリカ的システムに変わり、その結果大きな赤字が生まれた。
第3に工業国ではガソリン燃料の自動車の成長が止まったことだ。自動車はごく当たり前の耐久消費財になり、多くの人は新型モデルを所有したいという気持ちを失った。
東京では自動車なしで生活する人が増え、電車と徒歩の組み合わせになった。また都市の魅力は道が細く曲がっていること、古い建物が多いこと、徒歩と自転車で移動することにあることが判り、自動車が不要になった。
電気自動車開発と中印進出
自動車が復活するには環境に優しい電氣自動車の開発が必要であり、近い将来、都市では電氣自動車がゆっくり走るという時代に変わるだろう。
第4に世界経済の中心は徐々にアメリカから中国やインドに移りつつある。そこでは中型車の他に価格50万円程度の小型車の膨大な需要がある。それらは次第に低公害車需要に変わるだろう。中国の技術新は驚くべき速さであって、例えば電氣自動車が試作されており、また太陽電池の生産における世界第3位は中国に企業だ。トヨタの海外生産の中心は、中国やインドに移るだろう。
現在世界経済は奈落の底に落ちつつある。こうした大不況は世界の経済・政治の大転換期に発生するものだ。トヨタショックは大転換期における現象の一つであるに違いない。
トヨタは時代の変化を覚り、ガソリン型自動車の生産設備の償却を急ぎ、そのため赤字決算にしたのだろう。低公害車の本命はハイブリッド車ではなくディーゼル車だという説がある。また電氣自動車の時代が近い。トヨタはこうした分野の開発投資と中国やインドへの大規模な工場進出に全力を投入するだろう。トヨタの将来はその成果にかかっている。