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12月8日
原油価格の高騰と迫るドル危機
見当たらない安全な投資先
原油価格は、高くなればなるほど、さらに高くなるという困った状態にある。産油国は原油価格が上昇すると、ドル収入が増えるが、現在、安全な投資先が見つからない。産油国の資金を運用している機関投資家は、止むなく、原油や金など供給量が直ぐ増えない資源商品に投資したので、原油や金の価格が急上昇した。産油国は、それによって増えた資金を直ぐ原油市場に投下するから、価格はさらに押し上げられるのだ。
現在、世界にはドルが有り余っている。その原因は、アメリカの膨大な経常収支赤字だる。アメリカは、国内生産より、遙かに多くを消費する国だ。その差は輸入によって埋められているので、経常収支は毎年8000億ドルを遙かに超える赤字である。つまり、毎年、膨大な輸入支払代金(ドル)が、世界にばらまかれている。
今までは、アメリカ以外の国の政府や機関投資家が、散布されたドルをアメリカの国債、社債、株式等に運用したので、ドルはアメリカに環流した。その結果、アメリカでは低金利が続き、景気が上昇し財政赤字が縮小した。また企業は収益が増大し、投資を自己資金でまかなえるようになった。しかし、それとともに国債や優良社債が減ったから、海外の機関投資家は過剰ドルの優良な投資先を失った。
アメリカでは、消費者ローンも中高所得層の住宅ローンも飽和状態である。貸付先を失った金融機関は争って住宅金融会社に融資し、住宅金融会社はそれを低所得者向けのローンに使った。ローンは証券化されて、海外の機関投資家や銀行にも売られ、ドルが環流した。
このローンは期限30年、最初の2年は金利7%、それ以後は17%といった酷い条件である。昨年初めまで住宅バブルが続き、住宅価格が上昇し続けたので、借り手は返せなくなった時には、住宅を売却して返済する積もりだった。ところが、住宅バブルが弾け、中古住宅価格が急速に低下した。サブプライムローンの金利が跳ね上がるタイミングに差し掛かった人は返済できない。サブプライムローンの多くは不良債権になり、それを証券化した新金融商品の価格は暴落した。
住宅金融会社は倒産し、そこに融資した銀行は大被害を受けた。また、この金融商品を買っていた機関投資家や銀行は大赤字に転落した。アメリカの銀行は自己資本比率が低下恐れ貸し渋りを始めた。そのため、中・高所得層は資金繰りが苦しくなり、彼等が利用しているプライムローンにも不良資産が増え、アメリカは深刻な景気後退に落ち込みそうだ。
流失に転じた米の金融商品
世界の機関投資家は、アメリカの金融商品を買うどころか、逆に売り飛ばすようになった。アメリカは新金融商品を世界に販売してドルを回収するルートを失ったのである。ドル価格が低下の一途を辿っており、ドル危機が来そうだ。
産油国の機関投資家は、昨年から、投資を成長性が高い中国などのアジア新興国に向けた。しかし、アジア新興国は貿易収支が黒字であり、その上に、ドル資金が流入すると、それと交換されて国内で流通する通貨量が増えるからインフレになりそうだ。安全な投資先とは云えない。
そうなると、供給量が限られている資源商品が優良な投資先になる。産油国はOPECを通じて、原油の供給量を制限する力を持っているから、原油は投資対象として安全である。過剰ドルは原油市場に向かっった。
原油価格は上がりすぎた。世界的に見ると、高価格はコスト高による企業倒産の増加、個人消費の減少、原油需要の縮小という過程を辿って調整される可能性が大きい。世界の株価が暴落しているのはそのためだ。