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11月15日
日本「再生」の実情と課題
2%成長は一定の成果
小泉内閣と安部内閣は日本経済の再生に勤めた。平成16年度から実質2%以上の成長が続いたから成功を収めたといえよう。
日本のように人口構成が高齢化の一途を辿り、若年人口が減少し続けている国が、経済成長を遂げるには、低生産性の産業で働いている人が、高生産性の産業に移動する必要がある。そうすれば賃金が上昇し、経済が活性化するはずだ。
小泉・安部内閣は無駄な公共事業を果敢にカットした。その結果、地方では、専ら公共事業に依存していた低生産性の建設企業が続々と倒産し、また高級な技術を使わない工場は次々に中国等の低賃金国に移転してしまった。これに対して、生産性が高いハイテク、ソフト、金融、サービス業等は首都圏周辺に集中し、また世界1の生産性を誇る自動車関連産業は太平洋ベルト地帯で発展している。
労働力は絶え間なく、生産性の高い産業が立地する地域に移動し続けた。地方の山村や中小都市の若者は故郷を去り、出稼ぎの人は家族を呼び寄せた。その結果首都圏や自動車産業の都市では人口が増え、多様な流通サービス業が発達して、ますます華やかになった。
しかし地方は人口が激減して、見る影もなく衰退した。商店街はシャッター通りになり、小中学校は統廃合され、病院が縮小し、私立大学が倒産寸前の状態だ。山間部の集落ではわずかな数の老人所帯が点在し、荒れ放題の無人家屋が増えた。
小沢民主党は、参議院選挙で、この地域格差に焦点を絞り、地方分権や農家保護政策をスローガンして地方の票を掘り起こし、また年金、政治と金の問題、官僚の汚職等を追求して都市の票を獲得し、大勝利を収めたが、国会は捻れ、立法機能を失った。
ところで、日本経済の国際的な地位は低下し続け、経済の実力がはっきり判る購買力平価換算(物価で調整)のGDPをみると、中国は日本の2倍、アメリカは3倍である。
一人あたりGDPランキングでは、日本はオーストラリアに抜かれて16位になり、シンガポールと並ぶという状態だ。最近数年間の経済成長率は、アメリカの3%、韓国4%、中国10%であり、日本の地位は下がる一方だ。
自民、民主ともに弱み
日本が北朝鮮に対し、拉致問題の完全な解決を要求して厳しい経済封鎖を行っても、効果がなかったのは経済大国の中国と高度工業国の韓国が北朝鮮との経済交流が深めたからだ。日本が経済力を武器として外交戦略を展開できたのは過去の話になった。それどころか、六カ国会議では米・中・韓・ロが北朝鮮の経済開発に協力する方向にあり、日本は仲間外れになりそうだ。
日本経済は、地域格差の拡大という犠牲を払って構造変化を遂げたが、それでも経済成長率は、東アジアや欧米諸国と較べると、低水準だ。経済成長率が高い時には誰でも将来に夢を持てたが、低成長経済になると、低所得層は将来豊かになれるという希望を持てないから、格差意識が強くなり、社会不安が増してくる。
民主党は、参議院選挙に勝つために、この点を突き、農家保護政策を始めとして地方への「ばらまき政策」を公約した。しかし、党の幹部は生産性が低い産業を保護すると、日本経済が一層弱くなることを知っているに違いない。他方自民党は地方分権を一挙に進める覚悟と政治力を欠いており、福田内閣は中央の官僚に依存する姿勢である。勿論、党幹部は、官僚に依存する統治システムこそ、日本経済を非効率化した最大の原因であることを知っている。しかし両党とも内部の対立が怖いから動けない。
ばらまき政策を止め、かつ分権体制を確立するため、自民・民主両党にいる志が高い政治家の「大連合」が期待される。