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3月15日
ヘッジファンドの課題
世界同時株安の影響
2月の終わりには、上海における株価の急落を引き金として、世界の同時株安が発生した。上海市場では外国人の取引額が少ないにも拘わらず、その影響が一挙に世界へ拡がった。
その背景にはヘッジファンドの活躍があったに違いない。彼等はゼロ金利時代から低金利の円を借り、それをドルに換え、アメリカの株式等に投資して、マージンを稼いでいた(円・キャリー取引という)。その過程で円売りが増え、円安が進み、日本の輸出が伸びた。またアメリカの株式市場は一層活況になった。
ところが、日銀が2月始めに政策金利を引き上げた。またアメリカでは、景気が下振れして金利が下がり気味だった。そのため、円・キャリー取引のマージンが減り、うま味が消えてきた。円・キャリー取引を解消する時には、アメリカの株式等を売却し、それによって得たドルを円に換えなければならない。多くのヘッジファンドがそういう行動をとると、アメリカの株価が下り、また円買いが増え、円高になる。
そこで、ヘッジファンドは、株安、円高のリスクを避けるために、アメリカの株価が高いうちに株式を売却し、円が安いうちに円を買っておきたい。ヘッジファンドが株売り、円買いを始めようとしている時、突然、上海の株価が低下した。
中国では株価バブルが起きており、間もなく調整が起こると予想されていた。中国人には、企業経営の内容を検討せずに、馬券を買うような気持ちで株式投資している人が多いので、一旦株価が低下すると、狼狽売りする人が増える。株価は瞬く間に9%も下がった。
中国経済が不況に落ち込めば、日本の輸出企業と、中国へ大規模な工場進出している企業の収益が減退するに違いない。その上、円高の動向がはっきりしてきたので、日本の輸出企業の採算が悪化するに違いない。上海の株価暴落に引きずられるように、日本の株価も急落した。
こうして、日米の同時株安が発生し、それが直ぐに全世界に拡がった。ところで、シカゴ先物市場の統計を子細に見ると、2月27日にアメリカ市場で株価が暴落し、かつ円高になった時には、ヘッジファンドの多くは、先物取引を始めとした複雑な金融技術を使って、ドル売り・円買いを終了していたらしい(日経新聞3月9日夕刊による)。彼等は準備完了の状態だった。
予測謝ると金融不安に
円・キャリー取引を解消する時には、株安、円高になるが、ヘッジファンドは、実際にそうなる前に、取引を解消し、リスクを巧みにすり抜けたわけだ。その時、日本の多くの投資家は逆に円をドルに換えて、アメリカや日本の株式等を買っており、株安とドル安の被害を受けたはずだ。
極端な言い方をすれば、ヘッジファンドはまず、円・キャリー取引によって株高と円安をもたらし、それを解消する時には、世界同時株安と円高をもたらした。ヘッジファンドは、この過程で膨大なマージンを獲得して、利益を確定した。
中国経済は好調だ。アメリカ経済は住宅投資が衰えているが、まだ不安な状態にはない。日本経済は円高でも輸出が伸びるだろう。どの国でも株価の僅かな調整で済むだろう。
ヘッジファンドは、株価や為替レートが予測通りに変動した時には大儲けする。最近、ヘッジファンドの高収益に惹かれて、世界から巨額な資金が集まっている。しかし、巨大ヘッジファンドが予測を誤り、逆張りして破産すると、世界的な金融不安が発生する。金融のグローバル化が生んだこの怪物を、今後どのようにコントロールするかは世界的課題だ。