静岡新聞論壇

8月30日

日韓関係の変化

経済成長により訪日客増

東京・六本木の新名所・ミッドタウンに行くと、至る所で韓国語が聞こえてくる。この夏には知床半島の船の遊覧や立山アルペンルートは韓国人で溢れた。

九州のゴルフ場経営は韓国人客によって支えられており、別府温泉では毎日300人の韓国人が宿泊している。ソウルでは、毎年、何回も銀座、新宿、六本木などを訪れ、どの店の品揃えがよいとか、どの店の料理が旨いといった情報通のOLが少なくないそうだ。

7年前には韓国人の訪日客は、日本人の訪韓客の半分にも達しなかったが、今年の上期には、逆転して、韓国人訪日客の方が20万人も多くなった。

その原因は、まず、所得が上昇したことだ。韓国経済は年率5%の成長を続け、賃金がさらに上昇した。製品を高級化して、国際化に巧く乗った企業は高収益をあげ、勝ち組企業の代表である三星電子の初任給は、日本の大手電子企業より10%も高い。

これに対して、低技術の企業は中国との競争に敗れて、社員を減らし、賃金コストを抑えている。フリーターも増えた。大雑把に言って、勤労者全体の約半分に当たる1000万人は勝ち組に属し、毎年、何回も、日本を訪れるだけの所得に達している。

つぎに、住宅価格上昇によって資産効果が生まれた。韓国は年功賃金ではないから、40才を超えると、三星電子より日本の企業の方が高くなる。ところが、ソウル郊外の住宅価格は最近数年間で、東京郊外の1.5倍にまで上昇し、多くの中年サラリーマンは家を持っているので、資産価値が一挙に膨張し、豊かな気分になっている。

また、経済成長にともなって儒教が崩壊して核家族ばかりになり、日本以上に子供が少ない。こうして中年のサラリーマンも若いサラリーマンも生活に余裕が生まれ、軽い気持ちで日本旅行に出掛けられるようになった。

最後に、日本では消費者物価が低下し、また円安になったので、ホテル、ゴルフ場、喫茶、ブランド品など、何れの料金も韓国より低い。日本旅行は安上がりだ。

ところで、韓国人の勤労所得は日本人並みになった。日本は超低成長経済が続いた結果、アジアにおける経済大国の地位を中国に譲り、韓国とほぼ同じレベルの工業国に後退した。それとともに、韓国人の反日感情が急速に和らいだ。

植民地時代、見直す意見

韓国の代表的な新聞であり、反日的な記事が多かった東亜日報は、8月15日に日本の36年間の植民地時代を見直そうという注目すべき社説を載せた(韓国専門家の産経新聞黒田記者による)。この期間には韓国経済が年率1%成長を遂げ、当時としては高成長経済だった。人口は2倍近くに増えた。この時代を専ら暗い時代だ決めつけるのは、朝鮮民族の成長力を否定することになる、再評価しようというのである。

慰安婦問題も、戦争に付き物の嫌な事件の1つだという見方が拡がっている。日本大使館に対する定期的な慰安婦抗議デモは、ほぼ同じメンバーである。黒田氏によると、アメリカ議会における慰安婦非難決議は、韓国系アメリカ人・100万名が、アイデンティティーを確実にするために行った行動であり、韓国政府は立場上それを支持しているだけだ。

日韓関係は「恨み」と「言い訳」の時代から、普通の国と国との関係の時代に変わった。若い韓国人は日本旅行について、「親切」、「清潔」といった好意的な印象を述べている。静岡は朝鮮と和平協定を結んだ徳川家康の地であるから韓国人には評判がいい。

2年後の静岡空港には、韓国旅行者が多いだろう。その時、私たちは、普通の国の金持ちの客人として接することが重要だ。

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