静岡新聞論壇

4月26日

韓国弔問団をめぐる問題

しみこんだ「恨」の感情

韓国人学生が32名を殺害するという事件が起きた。韓国人は悲嘆に暮れている。韓国の中央日報によれば、韓国政府は、一時、アメリカに弔問使節団の派遣を検討したという。韓国では悲しい歴史の中で、国民に「恨」の感情がしみ込んでいる。アメリカ人が韓国人に「恨」を抱いたかと思うと耐えられない。在米韓国人の安全を守りたいという韓国政府の気持ちは、痛いほど解る。

しかし、犯人はアメリカの永住権を持ち、また、アメリカにおける殺人事件であるから、これは韓国政府と直接関係ない事件だ。アメリカは多民族国家であり、アメリカに住むどの民族も平等だということを建前とした民主国家である。アメリカ政府が、韓国政府派遣の弔問団を受け入れれば、この建前が揺らぎ、混乱の種になる。その点では、韓国政府は「国際ルール」に音痴だった。
ところで、韓国が逆の立場に立った時にはどうだろうか。日本は植民地時代に韓国人を酷い目に遭わせた。韓国人は日本に強い恨みを抱き、それを晴らすため、何回となく謝罪を要求した。

ところが、日本は過去の謝罪が終わったと考えている。2次大戦直後、戦争の恨みを一挙に晴らすために、戦勝国が敗戦国を軍事裁判で裁いた。戦争責任者を含めて合計919名の日本人が処刑された。この軍事裁判は一回限りの復讐裁判であり、これによって、報復の連鎖は防がれるはずだった。

2次大戦中には、中国で大勢の在留邦人が虐殺された。またアメリカ軍は中小都市にまで無差別爆撃を行い、さらに原爆を投下した。しかし、日本は、中国やアメリカに対して、これらの罪を問わなかった。復讐の気持ちを捨てたのだ。

韓国は敗戦の時には、日本の一部だったから、軍事裁判では復讐できなかったが、1975年の日韓条約によって、植民地化された賠償や、慰安婦に対する補償を獲得したので、復讐が終わっている。中国は軍事裁判で裁く立場だった。

対日復讐はすべて完了したはずだ。しかし、韓国と中国は、教科書、靖国、慰安婦等執拗に戦争中の問題を取り上げ、復讐を続けている。韓国政府は、現在のように、若い人が日本のアニメやファッションを好み、日本人が韓国映画好んでも、また世界情勢から見て、東アジア諸国が経済共同体をつくる必要性が高まった時でも、慰安婦等を取り上げている。

「国際ルール」身に付かぬ日本

韓国政府は、今回の射殺事件では、アメリカ人の「恨」を和らげるために弔問団の派遣を検討し、同時に、韓国人の「恨」を晴らすための日本批判を止めない。

ところで、中国人は世界中に散っており、いろいろな国で殺人事件を起こし、また殺人の被害者になっているが、中国政府は、決して謝ったり、非難したりしない。それは、相手国の問題であり、現地の華僑社会が解決すべきだと考えているからだ。彼等は、「国際ルール」を熟知している。

日本は韓国と同じように、国際音痴であるが、韓国が「国際ルール」を無視して前向きに乗り出すのに対して、日本は「国際ルール」が身に付かず、相手のペースに巻き込まれて、引き下がる癖がある。

中国は「国際ルール」を臨機応変に使い、日本の弱点をつき、国内政治が不安である時には、日本を仮想敵国に仕上げ、南京虐殺や靖国問題で責め立てる。現在のように、国内政治が落ち着き、環境投資が必要になってくると、反日運動を沈静化させるのだ。それと同時に、チャイナロビーは、アメリカで南京大虐殺の映画の制作を働きかけたようだ。

率直という点で、弔問団構想は如何にも韓国らしい。

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