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10月4日
アメリカ的市場経済の後退
中ロ、アラブ諸国の成長
アメリカで2001年から4年の間、金融大緩和政策が実施された結果、世界経済はすっかり変わった。
まず、アメリカでは住宅バブルが発生し、また住宅担保消費者ローンが増加して、内需が拡大した。それにともなって輸入が膨張し続け、経常収支の赤字は増加して、昨年、遂に8000億ドルを超える危機的な状態に達した。
アメリカが膨大な輸入超過を続けた結果、世界経済は刺激され、高成長を持続できた。中国、ロシア、アラブ諸国は経済力が強まると、一層独自な経済システムを追求するようになった。
中国経済は、対米輸出が激増し、10%成長を続けた。製造業の生産総額は遂に日本に追い付き、世界の工場になった。主要工業国やアジア諸国は中国経済なしには存立できない程、中国の経済的プレゼンスが高まった。
中国政府は統制型の市場経済に自信を強め、共産党政権は安泰である。外貨準備は1兆2000億ドルに達し、その1部は国営ファンドに投入されており、今後多くの外国企業を買収しそうだ。
ロシアはエネルギー大国である。中国やアメリカの経済が高成長した結果、世界のエネルギー需要が増加し、エネルギー価格が急上昇した。それとともに、ロシアの経済力が目覚ましく向上し、またナショナリズムが盛り上がってきた。
ゴルバチョフやエリティンの時代には、アメリカ的な市場経済に憧がれたが、今やそれはすっかり消え、帝政ロシア時代以来の国家の介入が大きい中央集権的・ロシア的・伝統的な経済システムに戻りつつあり、アメリカとの軍事的・外交的対立が目立ってきた。
アラブ産油国では、エネルギー価格の上昇によって獲得した巨額な資金をイスラム原理に則った融資活動に向け(例えば、豚肉を使う企業には融資しない)、またイスラム国家に優先的に投入しようとしている。近い将来、アラブ式金融圏が形成されるかもしれない。
ドル資金の環流ルート
一方、アメリカ経済の現状をみると、明るい見通しを持てない。昨年の春に住宅バブルが終焉し、住宅価格が低下した。過大なローンを負った人は、住宅を売却しても返済できない。サブプライムローン債権を証券化した証券はさっぱり流通しなくなり、それを契機として、多くの証券の信用力が弱まったので、今年の8月以降、世界に金融不安が拡がった。世界の投資家は、最も安全な国債に投資している。
アメリカの金融機関は、今まで、金融技術を巧みに駆使して新証券を開発し、それを海外の投資家に売却してきた。それによって、世界中にばらまかれたドル資金がアメリカに環流し、その過程でアメリカの金融機関は大きな利益をあげた。膨大な経常収支赤字が続く限り、この環流ルートが絶対に必要である。ところが、多くの証券の信用が失われ、かつアメリカの景気が後退して、金利が低下すると、ドル資金はスムースに環流しない。そうなると、ドル安傾向が続き、世界におけるアメリカの影響力が低下する。アメリカ的な市場経済が世界に拡がるという期待は、当分の間お預けである。
福田内閣ではアメリカ型市場経済を真っ直ぐに追った小泉・安部路線が、いくらか伝統型経済の方向に戻りそうである。多くの国で固有な経済システムを模索しており、日本もその例外ではない。