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5月17日
世界経済支える中国、東欧
高成長続くも物価は安定
最近、数年間、世界経済は高成長を続けている。中国は10%成長であり、ロシア、ブラジル、中東産油国、オーストラリア等の資源国は5~7%の成長だ。EUが4%、アメリカが3%である。経済成長率が高ければ、物価が上昇するはずであるが、消費者物価の上昇率は2~4%であって落ち着いている。
高成長・低物価の背景には、13億人の中国と、5億人のEUの経済成長がある。中国は膨大な量の資源を輸入している。そのため、石油、鉄鉱石、非鉄金属、木材等の資源の需給が逼迫して、国際価格が暴騰し続け、ロシアを始めとする大資源国は、輸出にリードされて高成長に転じた。
資源貿易の拡大によって多様な産業が活況になった。例えば、世界の海運会社は注文が激増し、タンカーや専用船が不足である。膨大な資源を中国に運ぶためだ。世界の造船業界は数年先までの受注を抱え、フル操業だ。
資源は中国で安い工業製品に変わり、それが世界に溢れ出ている。今や日本人やアメリカ人は中国製品なしでは、1日も生きていけない。私たちは100円ショップやユニクロのお陰で生活が楽になり、余裕が生まれ、薄型大画面テレビを買った。一口で言えば、物価が下落したので、消費生活が高度化したわけだ。
ロシア、パキスタン、ベトナム等、中国に接している国では、国境付近の寒村にも中国語の看板が目立ち、安い中国製品が売られている。そこの住民も、中国製品のお陰で、いくらか豊かになった。
ところで、中国は高技術製品を生産できないので、高級なハイテク部品やハイテク生産設備を日本や欧州から輸入している。日本では、低技術産業が工場を中国に移転して姿を消したが、それに代わってハイテク産業が成長し、輸出も内需も伸びた。薄型大画面テレビやその部品が好例だった。
日本の景気は、ハイテク製品の輸出が増加したので回復に転じ、ついでハイテク産業の設備投資が増加して、現在でも上昇過程が続いている。石油などの資源価格が暴騰しているが、中国製品が拡がっているので、消費者物価は動かない。日本経済は好調である。
アメリカでは、一般消費財の産業がそっくり中国に移転し、スーパーでは中国製品ばかりだ。その結果、物価が安定し、長期金利が低くなり、住宅投資が伸び、今まで10年間もプラス成長が続いた。
世界的に広がる所得格差
ヨーロッパでは、EUが東歐を含む大市場に膨張し、そこでは投資規制が緩和されたので、ヒト、モノ、カネの交流が一層激しくなった。工場はユーロ圏から賃金が低い東歐に続々と移転し、そこで生産された安い製品がユーロ圏に送られている。その結果、東欧経済が成長し、ユーロ圏の経済が一時期低迷した。
ドイツでは、工場の東欧移転が活発になるとともに、強力だった労働組合の立場が弱まり、賃金が変わらずに労働時間だけ延長され、企業が再び強くなった。
フランスではサルコジ氏が労働時間の週35時間制の廃止を公約して、大統領選挙に勝った。賃金水準の低下ー企業収益の増大ー設備投資の増加ー経済成長というプロセスが始まりそうだ。
こうしてみると、中国や東欧の低賃金労働者の働きが世界的な経済成長と物価安定をもたらし、また先進国経済を活性化し、投資を刺激したようだ。ところで、これらの貧しい人たちは、経済成長とともに少しずつ豊かになったから、今まで不満の噴出を抑さえてきた。しかし所得格差が世界的スケールで広がり、かつ大きくなっているので、間もなく、経済成長と物価安定とのバランスが崩れるかもしれないという不安がある。
(以上)