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6月7日
綻び目立つ優しい国日本
みるみる衰えた経済力
日本経済は国際的にみるとかなり弱くなった。労働生産性の世界ランキングは19位に落ちた。国民の豊かさ示す指標の1つは購買力に換算した一人当たりGDPであるが、その世界ランキングで、日本は香港に抜かれ15位になった。(以上・OECDとIMFの調査)
韓国の平均賃金は円に直すと日本より高い。それは、最近10年間で賃金は韓国が80%上昇したのに対して、日本が10%低下し、さらにウォンの対日為替レートが30%も高くなったからだ。韓国人は豊かになり、訪日旅行者が激増している。
日本経済が弱くなった原因は、少子高齢化が進んだ上に、建設業、小売り・飲食業、農林業等、生産性の低い産業がまだ大きい比率を占めているからだ。そのため、国全体の生産性が低くなり、経済が伸びない。
日本は実に優しい国だった。生産性が低い産業を競争に曝せば、倒産や失業が増え、そういう産業が多い地域は衰退してしまう。政府はそれを防ぐために、ずっと前から競争を制限する法律を作り、公共事業を地方に厚く配分し、故意に談合を見逃してきた。
そうした結果、平成の始め頃には、日本は世界で最も平等であり、地方の隅々まで豊かな国になった。しかし、楽しいことは長く続かないものだ。低生産性産業が収縮せず、また無駄な公共施設や道路が増えたので、日本経済の力はみるみる衰えた。日本は世界の工業国の中で最も経済が停滞している国に転落し、アジアで経済が強い国は日本から中国に移った。
かっては、日本経済は官僚が優秀だから強いと言われたものだ。官僚は低い賃金で猛烈に働き、アメリカ経済を目標にして、重要産業に資金を集中し革新技術を導入する巧みな政策を展開した。
しかし優しい国に変わると、政府や政治がおかしくなった。政府は弱い人を救うという名目で多額の予算を握り、強い政治家は選挙区の利益のために多くの予算を分捕った。また経済的強者が弱者の振りをして、政府を強請り、たかったので、いろいろな補助金が膨張し続けた。
官僚の主たる仕事は政治力が強い地域や集団に多くの予算を配分し、弱い産業を守るために規制をかけることに変わった。それは張りのない仕事であるから、官僚は次第に良識と意欲を失い、時代の流れに巧く乗り、弱者を助けるという名目で多くの特殊法人を創って天下り先を増やした。同時に、いろいろなところで綻びが目立ってきた。
官僚の早期退職は損失
社会保険庁はその典型だった。グリーンピアで大損失を招き、国民年金の記録漏洩や不正な保険料免除事件を起こし、さらに年金の記録漏れが5000万件あるという堕落振りだ。厚労省から天下った幹部は素知らぬ顔であり、本庁採用者と地方事務所員とは人事交流がなく、バラバラに仕事をしていた。
現在、特殊法人の解体、談合の取り締まり、公務員制度の改革等が進み、世間の「役人叩き」が激しくなっている。考えてみると官僚は国家を運営するという重要な仕事を担っており、その中で行政の腕を磨いた。
最近、中央官庁では働き盛りのキャリア職員が希望を失い続々と退職しているが、税金を使いながら腕を鍛えた官僚が早く退職するのは納税者にとって損失だ。また天下り禁止すると、官僚の技能の多くは民間企業で役立たないから老後が不安になり、若いうちに転職する人が増える。これもマイナスだ。
官僚が天下り先を気にせずに、国のため安心して働けるためには、まず政治家が圧力団体の利害から離れてしっかりしたビジョンを示し、官僚が意欲的に働ける枠組みを築き、つぎに、官僚の定年を延長し、かつキャリア職員も定年まで働く慣行をつくることだ。 (以上)