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静岡総研「SRI」冒頭論文  2008年12月

留学生を増やそう

将来の日本経済は、労働人口が減り、年金生活者が増えるから、成長率は低下の一途をたどり、下手をするとマイナスになるかもしれない。これを防ぐには、生産性を向上し続けなければならない。しかし、それは非常に難しいことだ。若い年代は、高齢者の年金や介護・医療費を負担するから、生活が苦しくなる。それにもかかわらず、学問に励み、研究開発に努力し、工夫し熱心に働かなければならないからだ。

日本の総人口は減少局面にあるとみられることから、日本全体が過疎化して都市や街が消え、企業の国内向け売上高は減少の一途をたどるだろう。企業は、すでに国内市場を見限り、市場を海外に求め、世界各地に工場を造っている。その結果、海外諸国の雇用が拡大し、その國の経済は順調に成長している。企業は海外部門の高収益に支えられて発展する。しかし、日本経済は少しも成長せず、高齢者等の経済弱者の生活は苦しくなるに違いない。

日本経済の生産性を高める唯一の方法は、多くの優れた外国人が日本に定住し、日本国籍を取り、終生働くようになることだ。彼等は所得が上昇し、多額の税金を納めるから、日本には経済弱者を救済する財政的余力が生まれる。また外国人の定住によって、人口減少のスピードが弱まるだろう。

最近、製造業では、優れた人材を求めることができず、生産性の向上が難しくなっている。製造業に勤めると、地方の工場勤務になり、つぎに発展途上国の現場工場に転勤させられ、10年以上も途上国で生活する可能性が少なくない。多くの若い人は地方や途上国ではなく、東京で暮らし、原宿や六本木で楽しく生活したいのだ。工場ではなく、豪華なビルで仕事をしたいのだ。

製造業では、国籍を問わず平等に採用試験を行い、平等に昇進するという人事制度を採用している企業が増えた。企業は優れた人材がアジアから続々と日本に留学して、日本語を自由に話し、日本の企業風土を理解するようになることを望んでいる。彼等を本社員として採用したいのである。

しかし現状では、アジアの優れた頭脳は、アメリカ、イギリス、シンガポール、オーストラリアに留学している。英語を自由に話し、欧米の企業風土や歴史を理解していれば、雇用機会が世界的に拡がるからだ。日本留学の場合は、雇用機会が主として日系企業だけであり、日系企業では、外国人の昇進が遅れるという評判が広がっているので、人気が盛り上がらない。

最近、アジアの大学では、留学生獲得競争が盛んになった。中国の一流大学はアジアだけではなく、アフリカの資産国の留学生を増やすために、現地で入学試験をしたり、また留学資金を援助している。

シンガポールは、出生率が低下しているので、留学生を増やし、優れた人材をシンガポール人にして国力を高めようとしている。シンガポールでは、英語と中国語をマスターできるから留学先として人気が高い。

日本でも優れた留学生には経済的支援を与え、地域コミュニティにとけ込む機会をつくり、日本を好きになってもらいたい。

また外国人社長や役員が増え、昇進に差別がないことを示したいものだ。 (以上)

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