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静岡総研「SRI」冒頭論文 2008年7月
原油価格の上昇に抵抗できる都市づくり
自動車の保有台数は、05年から横ばい状態にある。今後、それはかなり早いスピードで減少傾向を辿りそうだ。まず自動車を乗り回す若い人口が減るからだ。06年には、18才~69才の人口は約9.000万人であるが、今後減り続け、20年後には約7.500万人になるという予想だ。また、75歳以上の老人は、約1.000万人から約2.000万人に増えるという。
75歳以上の老人の半分が自動車の運転を止めるだろうから、日本全体で20年間に、自動車を運転する人口は約2.000万人も減ることになる。道路投資計画の多くは不必要になるだろう。
その上に、ガソリン価格が急騰している。現在の1バーレル当たり140ドルの価格は、巨額な投機マネーが流入した結果であって、アメリカにおける信用不安が消え、ドルの信頼性が回復すれば低下するだろう。しかし、中国やインドの石油消費需要が激増しているので、低下するにしても、5年前の20ドルではなく、70ドルぐらいの水準に高止まりするに違いない。
マクロ経済から見ると、最近1年間で原油を始めとする資源の価格上昇によって、GDPの5%に当たる25兆円の所得が資源国に移転した。今後、投機的な動きが止まり、資源価格が下がったとしても、毎年、15兆円ぐらいの所得が奪われ続けるだろう。
これに対して、日本がとるべき対策は、まず、資源国に工業製品を高く売ることであるが、韓国、EU諸国、中国との競争が激しく、思うように販売価格を引き上げられない。
もう一つの方法は、省石油を進めることだ。 幸いにも、東京ではすでに、自動車を持っている人が減り始め、都心の新築マンションでは、駐車場の数が少なくなった。私鉄と地下鉄の相互乗り入れが広がり、また新線の建設や複々線化が進み、さらに、大きな駅の「駅ナカ」が巨大なショッピングセンターになったので、日常生活では、自動車が必要ではなくなった。郊外のショッピングセンターやスーパーの客が減り、都心部の繁華街に人が集まり、都市のコンパクト化が進んだ。
ところで、老齢化社会になると、住宅街でのスーパーやコンビニでは、待っているだけではお客が増えない。一部のスーパーは、幾つかの品物をきめ、ネットで注文を受け、宅配するという企画を実施している。過疎地では、自動車で買い物に行けない人が増えたので、生鮮食料や弁当を小型トラックに積み、集落を巡回しているコンビニがある。老人が、自動車なしで生活していける環境は徐々に整いつつあるといえよう。
地方の中核都市は、すっかり、自動車中心の都市構造に固まった。しかし、都市の生産性を高めるには、生活のコストの引き下げや環境保護が重要であり、是非とも、公共輸送システムを充実すべきであろう。そうすれば、原油価格の上昇に抵抗力がある都市になれる。(以上)