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文化の発信地へ静岡県の軌跡
(04/1)
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静岡総研「SRI」冒頭論文 2008年1月
財政破綻と医療
財政赤字は絶望的な大きさだ。2007年度(当初予算)には、歳出総額83兆に対して、税収は54兆円に過ぎず、30兆円近い国債が発行される。国債は累増して対GDP比率は180%に達し、欧米水準の60%を遙かに超えた。
国債残高が多くなると、次のような深刻な問題が生まれる。第一に金利を上昇させることが出来ない。景気が過熱した時、金融を引き締められない。金融引き締めの結果、国債金利が1%上昇した時、国債の金利負担が2兆円近く増える。景気が上昇し、GDPが1%上昇しても、税収増は1兆円以下である。日本は景気政策を実施できない國になった。
また、預金金利は半永久的に低い。極端な円安が続き、海外旅行は割高になり、現在、遂にロンドンの地下鉄は、約1.000円になった。
第二は国債費が一層増加することだ。2007年予算では、すでに国債費は20兆円に達し、社会保障費とほぼ同額である。今後、国債残高が増えると、国債費が膨張し、政府は、国民世活の向上に寄与する経済政策を実施できない。社会保障費が減額されるかもしれない。
第三は、税負担が後世に移転されることだ。国債発行によって、調達された資金は社会保障や公務員の給与等に消費され、後には何も残らない。建設国債の場合には、橋や道路などにインフラが残り、後の世代が利用できる。しかし、普通の国債の場合には、現在の人だけが豊かな生活を送り、後の世代が多額な税金を払い、その償いをしなければならない。
これは、酷い話であるが、国民は一旦手に入れた豊かさを、絶対に手放さないものだ。その証拠はこれほど財政が破綻して、後世の人が確実に貧困に追い込まれるにも拘わらず、補助金を増やせと強く要求し、増税には激しく反対するのだ。
では、増税せずに、国債を減らす方法はないだろうか。医療について考えてみよう。医療は技術進歩を遂げ、高価な医療器械が使われ、かつ老人の数がぐっと増えた。そのため、医療費総額は増える一方だ。財政赤字はさらに膨張し、後の世代は満足な医療を受けられないかもしれない。
そこで、まず医療・介護における労働力を増やし、競争が激しくなる条件を創り、コストを引き下げる必要がある。フィリピン人の看護士はどの工業国でも歓迎され、間もなく、優れた人材が払底すると言われている。勤務成績が優秀な人には、婦長のポストを与え、年金・社会保障を準備し、かつ国籍を認めなければ、優秀なフィリピン人が来ないだろう。
次に、病院の専門化を進め、高級医療設備の稼働率を引き上げることだ。また、医療特区を設けて、外国人医師・看護士を招きアジアからの患者を増やし、医療産業の国際競争力を高めることも必要だ。アジアには裕福な層が増え、日本での治療需要が拡大し、医療産業が成長するだろう。その納税額が増えるに違いない。院長には、経営の専門家が就任する必要がある。
最後に、難しい問題であるが、過剰な延命治療が再検討されるべきだろう。(以上)