静岡新聞論壇

3月8日

北朝鮮は大規模経済特区を

崩れる政府の世産計画

東ドイツ人は、ドイツ統一後、惨めな生活に落ち込んだ。政府は崩壊し、国営工場は倒産したので、幹部の官僚、技能のない労働者、社会や歴史の先生等は、職を完全に失った。

ホテルの従業員は、サービスを全く知らなかった。経営者が西ドイツ人に変わり、多くの従業員が解雇されて、サービスが向上し、お客が増えた。

東ドイツ人は、統一後、盛んに西ドイツの観光地を訪れた。安物の服装をした田舎者丸出しの彼等は、いたるところで軽蔑の眼を感じ、冷たく接せられ、自尊心を傷つけられた。

北朝鮮の経済が破綻して、韓国と統一された時、北朝鮮人は必ず同じ目に遭うだろう。北朝鮮の幹部は、強い経済を創る必要性を充分に知っている。

しかし、計画経済では、製品、部品、材料が多様化した高度な経済社会に対応できない。政府が、それらすべての生産計画を立て、実現するのは不可能である。実際、部品や材料が不足して、計画が大きく崩れ、常時、経済が混乱している。

国営工場の目標は、ノルマの達成であって、工場の責任者は上部機関とノルマを減らす交渉に熱心であって、品質向上には無関心だ。重化学工業では、国営企業の独占製品が多い。競争がないので、生産性が向上しない。

この弊害を除くために、02年に、ある程度であるが、流通の自由化、国営企業の自主的経営、民間企業の活動等を認める政策が実施された。しかし、部分的な市場経済化は計画経済を混乱させる結果に終わり、09年に市場経済化は中止になった。 北朝鮮は、経済の弱さをカバーするために、核武装し、厳しい言論統制を続け、国民の反乱や外国の干渉を防ごうとしている

また、「核兵器」を有効に活用している。ウラン濃縮工場の稼働を中止にする代償として、再び、アメリカに食料支援を求めている。核兵器の開発と生産に投入された資源を、農業に向ければ、食料生産は激増したはずだ。「核兵器」を活用して、農業投資の不足を補おうと云うわけだ。支援食料は、国民に特別配給され、金正恩氏の徳の高さを示す絶好の素材になる。

外貨歩美込むチャンス

アメリカは、北朝鮮の濃縮工場を止めさせたという実績を武器として、イランに核開発を中止させる権威付けにしたい。しかし、近い将来、濃縮工場の運転が再開されるという不安が消えたわけではない。

北朝鮮の一部の幹部は、計画経済には欠陥が多く、また核兵器などの軍事産業に傾斜し過ぎた産業構造では、経済が成長しないことを知っている。しかし、軍部や軍事産業の力が強すぎて、改革ができないのだ。

今年は、ロシア、中国、アメリカ、韓国の首脳が交代する。金正恩政権が、「大規模経済特区」政策を実施して、外資を呼び込むチャンスである。まず中国が乗るだろう。現在、外資は投資機会をアジアに求め、周辺国は北朝鮮の安定を望んでいる。新しい展開になるかもしれない。

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