静岡新聞論壇

4月19日

中東に広がるシーア派勢力

イラン、シリアで強権

シリアは古い國であるから、キリスト教徒やイスラム教の多数宗派が存在している。現在は、人口の十数%のアラウィー派(シーア派の1派)が政権を握って、反対宗派を弾圧して、独裁政治を続け戦乱の中東で国家を維持している。

シリアのアサド政権は、国内に政治的不安要因を抱えているから、過去数十年間、核兵器を持っているイスラエルとは直接に戦わなかった。シリアは大国であり、アサド政権は中東の平和に必要だった。

ところが、最近、中東では、アサド政権の背後にいるシーア派の力が増してきた。イランは強固なシーア派の宗教国家である。レバノンではシーア派・民兵組織が戦闘的である。アラビア湾岸のエネルギー資源が豊富な島や、サウジアラビアの油田地帯では、シーア派の住民が多数派である。スンニ派の大国であり、親米的なサウジアラビアを脅かしている。

イランは宗教独裁国家であり、西欧的民主主義、自由人権は認められない。イスラムの戒律を守る宗教共同体に生活し、享楽的なアメリカ文化は絶対に許せない。

その上、誇り高いイラン人は欧米から受けた歴史的な屈辱を決して忘れていない。イランは18世紀以来列強の餌食になり、両世界大戦では、英米独露土の軍隊に国土を蹂躙され、石油資源を収奪された。 二次大戦後、イラン政府が外資石油会社の国有化を宣言すると、アメリカのCIAが親米政権を創り、イランをアメリカの核燃料の生産基地にするべく、巨大な原子力施設を計画した。

しかし、大衆は、シーア派の戒律に従って宗教共同体生活を送っており、イスラムの伝統モラルを破壊するアメリカの政策を拒否した。79年のホメーニの宗教革命は、国民の熱烈な支持を受け、イランは徹底的な反米国家になった。

欧米も手を焼く弾圧

ところで、シリアはシーア派が中東で存立を保つ重要な國である。シリアでは、「アラブの春」に乗って反政府運動が起きたが、それは烏合の衆だった。海外のシリア人がアサド批判を展開したが、反乱者との連絡網がなかったそうだ。国内の反乱者には周辺国や国内のスンニ派の寄付金を目当てに戦っている人が多かったという。 しかし、反乱者は次第に民兵組織になり、一時休戦の命令が伝達されたが、アサド政権の正規軍には到底勝てない。欧米軍は出兵してシーア派のアサド軍を叩きたいが、泥沼戦争に落ち込むだろう。アメリカ軍はアフガンとイラクを抱え、EUは経済危機に苦しみ、リビア問題が片付いていないからだ。

アメリカはアサド対策として、そのバックにいるイランに対して、核開発を中止させ、弱体化を企んでいるが、インド、パキスタン、北朝鮮、イスラエルに核武装を認め、イランだけ禁止というのは筋が通らない。鳩山さんはイランに対して同情的な発言をしたいらしいが、効果的な発言には、国会議員を辞任し、中立的立場でイランに関する論文を幾つも発表して、世界から信頼を得ることが必要だ。

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