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4月5日
財政赤字は銀行危機を招く
デフレ克服へ金融緩和
円レートは、最近3ヶ月間で約10%も下落し、80円台の前半になった。この円安に関して、次の2点が注目される。その1つは貿易収支の赤字である。98年には16兆円の黒字だったが、昨年は2兆円の赤字になった。48年ぶりのことだ。
昨年は、大地震、原発事故、バンコック洪水等、深刻な事態が発生した。原発が止まり、大量な天然ガスと石油が輸入され、また深刻な部品不足が発生して供給力が低下した。
しかし、貿易収支赤字の発生は、もっと構造的な要因に基づいている。まず日本が得意としていた産業が弱くなり、例えばテレビや半導体では日本企業は総崩れになり、韓国や台湾から輸入に頼っている。 多くの産業は生産・開発の拠点を海外に移した。今後、人口が急速に減少し、国内マーケットは縮小するから、企業はそうせざるを得ない。自動車では海外生産が進み、昨年の輸出台数は、08年の70%に減少した。日産マーチは海外工場から日本へ逆輸出される。今後、貿易収支が黒字になったとしても、わずかな額であり、円高に戻す力にはならない。
もう1つの注目点は、日銀がデフレ経済を克服するため、物価上昇率が1%になるまでずっと金融緩和を続け、また新成長産業に潤沢な超低利資金を供給するという画期的な政策を決めたことだ。見事である。アメリカ経済は回復し始め、EUは目先の金融危機を乗り切った。世界の投資家の資金は、低金利の持続が約束される円から、経済が回復基調のドル等に移ったので、円安になった。
円安になると輸出産業が活気づき、成長産業は金融的に支援されることになった。日銀の新政策が評価され、価格が低下していた日本株が海外から買われている。
日本経済は明るさが増したが、これによって、日本経済の危機が収まったわけではない。高齢化が進み年金・医療費等の支出が急増している。それにも拘わらず、政府はそれらの削減に努めずに、専ら国債を増発して、つけを将来世代に廻している。消費税の引き上げは、福祉支出を現在世代が負担することであり、当然の政策であるが、反対議員が多い。
国際価格暴落の危険性
もし、政府が財政を再建せず、国債が膨張し続ければ、高齢社会では預金が増えないから、近い将来、国債は海外で販売せざるを得なくなる。しかし、海外市場では、財政破綻国の国債は低い価格で評価される。
ところで、企業の投資意欲が弱いので、銀行は融資が伸びない。やむなく集めた預金で国債を買い、わずかな利鞘を稼いでいる。しかし、将来、国債が国際市場で販売され、価格が下りそうになった時には、銀行は手持ち国債を売り急ぐだろう。その結果、国債価格が暴落し、倒産銀行が増えるかもしれない。
銀行には、成長企業を発見・評価する能力の向上と、融資の拡大が期待されている。また政府が年金・医療の支出を節約し、それを若者の教育費に投入すれば、ハイテク新製品を開発・生産する新企業が生まれ、銀行がそこに融資すると、日本経済は立ち直れる。