- 2015年
- 2014年
-
- 世界経済低迷と日本の方向性 (12/18)
- ウクライナ問題とロシア (12/04)
- 労働力不足時代への対応 (11/20)
- 中国経済の危機と日中関係 (11/06)
- 全国に広がったノーベル賞学者 (10/23)
- 宇沢弘文さんの警告 (10/09)
- スコットランドの自治権拡大 (09/25)
- イスラム国の新兵器・公開処刑 (09/11)
- アメリカのゼロ金利政策は続く (08/28)
- 静岡県の8月15日 (08/14)
- 戦争の臭いと日本外交 (07/31)
- 経済発展へ外国人支援を (07/17)
- 楽観的にみる「空気」の危険 (07/06)
- 長期雇用の復活のメリット (06/19)
- 一次大戦後、100年の危機 (06/05)
- 米国衰退の時、選択の幅 広く (05/22)
- 技能より学問の国の悲劇 (05/08)
- ユーラシア中央部の歴史動く (04/17)
- 日本批判に転じた韓国 (04/03)
- ウクライナの国内融合が重要 (03/20)
- アメリカの衰退と日本の危うさ (03/06)
- 新企業育てる機能作ろう (02/20)
- 新興国の夢が去る (02/06)
- 進む「中国的民主化」 (01/23)
- 「戦勝国」になれなかった中韓 (01/09)
- 2013年
- 2012年
- 2011年
- 2010年
- 2009年
- 2008年
- 2007年
- 2006年
- 2005年
- 2004年
- 2003年
- 2002年
- 2001年以前
12月4日
ウクライナ問題とロシア
クリミア半島めぐり攻防
1990年代にソ連支配を脱した東欧諸国は、順調な経済成長を遂げ、ソ連圏時代には、東欧諸国の経済力はエジプト並だったが、今や西ヨーロッパ諸国に比較されるようになった。
ドイツが統一する時、ロシアはNATOがドイツ以東に拡大しないという固い約束をアメリカ等と結んだ。ところが、国力が向上した東欧諸国は、続々とEUに加盟し、NATOにも加わった。ロシアはNATO加盟国と国境を接する状態になって軍事的危機を感じており、軍事的経済的支配圏が著しく縮小し、弱い国になった。
ウクライナは、ロシアにとって地政学的に重要な地域であり、ソ連が崩壊した91年に独立した後、親ソ派と反ソ派の政権が交代するように続いた。今年2月、巨大なデモによって親ロ政権が倒されて、EU加盟を主たる政策に掲げる新政府が樹立された。ロシアは許せない。この反ロ・クーデターに対する報復として、クリミア半島で住民投票を行い、圧倒的なロシア帰属支持を獲得した後、武力で占領した。
欧米勢力は、武力を使用せず、豊かになった東欧諸国への支配圏を静かに拡大したから「平和的行動」だった。ところが、クリミア半島は、80年代までロシア領であり、フルシチョフがプレゼントした地域であるが、住民の大部分を占めるロシア人は、冷遇されてきた。しかし、ロシア軍が出動したので「侵略」と判定され、経済封鎖という国際的刑罰を受けている。
クリミア半島は50年代までロシア領で、ソ連時代、当時のフルシチョフ第1書記が連邦内でウクライナに割譲した経緯がある。ロシア人住民は長く冷遇されてきた。
ウクライナも、西部と東部の宗教対立が千年以上も続き、同じ国とは言えない。西ウクライナは長い間、ポーランドやリトアニアの領地であって、人々はヨーロッパ・キリスト教を信じている。第2次世界大戦ではドイツ軍に協力したこともあった。これに対して、東ウクライナはスラブ族が多く、東方正教(ロシア正教)を信じ、政教一致、イコン崇拝、スラブ音楽など、ヨーロッパ・キリスト教と異質文化の地域であって、一つの国になるのが無理だった。
日本巻き込んだ外交戦も
ウクライナは、約25年前の独立当初には、政府機能が存在せず、司法も警察も貧弱だった。賄賂が横行し、経済が停滞する中、オリガルヒ(新興財閥)だけが発展し、国民経済が混乱して、貧富の差が拡大した。
東部は、鉱物資源に恵まれ、ロシア人が移動して重工業を起こした。しかし人口がウクライナの20%を占めるだけであり、彼らは、ロシア語しか話せないので、反ロ政権の下では酷く冷遇された。ロシアのクリミア占領を機に、ロシア系住民は、宗教上の差異や反ロシア語運動の恨みも加わって、激しい内戦に突入した。両軍で戦死者1万人、難民は80万人という惨状であるが、反政府軍は、連邦制による自主権を獲得するまで戦いをやめないだろう。
ロシアは、ウクライナがEUに加盟すれば存在の危機に立たされるから、反政府軍に武器援助を続けるはずだ。経済封鎖や原油価格の低下の打撃を克服するため、中国と経済同盟を組み、イランに接近しており、ぜひとも日本と緊密になりたい。選挙公約には書けないが、選挙後の日本の内閣には、ロ米中欧との難しい外交戦が待っている。