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11月6日
中国経済の危機と日中関係
賃金上昇が収益圧迫
中国経済は、30年間も年率10%の成長を続け、人類史上の奇跡を創ったが、経済には、山高ければ谷深しという常識があり、中国もその例外ではない。
最近、中国経済の成長率は低下傾向をたどり、谷の入り口に近づいているように思われる。その要因はまず人手不足であり、総労働力人口は減少し始めた。過去30年間の中国では労働力が農村に“無限”に存在し、都市に出て農民工として低賃金で働き、経済成長を支えた。ところが、人手不足時代に入ると、労働者の力が強くなり、賃金を上げなければ、働かない。
彼らは団結して政府や経営者と戦える力を持った。中国各地でストライキや暴動が増加しているのはそのためだ。中国の労働分配率は、日本や欧米諸国の60~70%に比べ、わずか40%であるから、中国企業は賃金上昇に応ずる余裕がある。賃金が上昇すると消費市場が膨張して、中国経済は輸出主導型から、消費主導型という正常な成長パターンに変わる。賃金上昇時には所得格差は縮小するから、中国に平和な社会がやって来る。
しかし、そうなるためには、生産性の向上と、高付加価値製品の生産拡大という二つの条件が満たされなければならない。中国経済は生産効率が悪く、例えば、GDP1単位を生産するのに必要なエネルギーは、先進国平均の3倍、日本の5倍を超え、大都市の環境汚染はひどい。主要産業は国有化され、国家がバックに付いているから、低生産性を改善しようという意欲を全く欠いている。どうしても構造改革が必要だ。
多くの企業は模倣癖がつき、新商品を長期にわたって開発し続ける力を欠いている。生産性の向上や高級製品の開発には設備投資が必要であるが、賃金上昇が収益を圧迫している時、企業が投資を増やすのは困難である。今後、労使対立がさらに激化するかもしれない。
対決続ける余裕なし
第2の問題は人口構成の老齢化である。人口のピークは2030年にくると推定されている。平均寿命が延び、40年だという説もあるが、とにかく、今後、労働力人口が早いスピードで減るのに対し、老人人口は急スピードで増加する。この点は日本と同じであるが、中国では、年金・健康保険・介護保険等、社会保障制度がほとんど整備されていない。今後悲惨な老人が増え、若い労働力が介護にとられ、経済成長が鈍化する可能性が大きい。
中国が世界のリーダー国の地位を保つためには、構造改革を15年ぐらいで達成すべきであるが、時間がとても足りない。汚職天国の中国では、中央政府の幹部の多くは私欲に走り、海外に巨額な資産を隠している。
習近平国家主席はこの腐敗組織の打倒が構造改革の第一歩だと考えた。見せしめとして有力幹部に重罪を課して反対派を脅し、独裁力を強化して国有企業改革をはじめ先延ばしが効かない構造改革に挑戦するつもりだ。
中国にとって、高付加価値化、効率化、老齢化対策には日本の技術が必要であり、日本と対決を続ける余裕はない。日中関係は、自然な形で改善に向かうはずだ。