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12月10日
中国の実力と壮大な野望
第3の地位占める通貨に
元は、2016年10月から、IMF(国際通貨基金)のSDR(特別通貨引き出し権)と交換できる主要通貨になり、円とポンドを軽く抜き去り、ドル、ユーロに次ぐ第3の地位を占める。IMFは、中国が今年の後半に行った元の市場レートの切り下げや、一部の金利の自由化などの政策を評価した。また、周辺国との元建て取引が拡大し、元圏は、円圏に匹敵する規模になり、拡大を続けそうだ。
中国は、1億人近い極貧民、巨大な貧富格差、賄賂の横行、全国各地の暴動、首都の大気汚染など、混乱した発展途上国のように見える。しかし、マクロ経済の立場からみると、見事な発展を遂げ、先進国に近づいた。
今まで、中国は世界の工場であり、世界の公害を集中的に引き受け、欧米や日本は、公害発生後の製品を輸入したので、クリーンな環境を維持できた。
しかし、賃金が上昇した結果、コスト高になった産業は東南アジア等へ移転し、また所得の上昇とともにサービス化が進展したので、中国はエネルギー消費量の少ない国へと構造的な変化を遂げている。経済のサービス化に対しては、保守派の反対が強く、習近平氏の手腕の発揮しどころである。
また、主要な公害源である石炭の使用が減った。沿岸地方の古い火力発電所が閉鎖され、西部に世界で最新鋭の大型石炭火力発電所が建設されている。その上、再生可能エネルギーの開発が進み、CO2を排出しないエネルギーが10%を越えるウエートになった。今年、7月までの石炭消費量は、前年比5%の減少である。
国際通貨には、資本の自由化が必要であるが、中国は、アジアから欧州に達する「一帯一路政策」によって中国独特な資本自由化政策を意図している。まず、最終目的地のイギリスを狙い、原発や高速鉄道への投資など8兆円近い契約をまとめた。イギリスは、率先して、アジアインフラ投資銀行(AIIB)に出資して、元取引の国際市場センターになることを狙っている。
資金力、競争力で劣る日本
中国は「一帯一路」のルート上にある戦略的に重要な国に対しては直接に投資し、そうでない国の返済能力が認められるプロジェクトには、AIIBを通じて融資するつもりであり、徐々にドル建てから元建ての融資に変えるに違いない。その際、中国は、各国と通貨交換協定を結び、資本自由化を一歩ずつ進めるだろう。もし一挙に資本を自由化したならば、大量な資本が移動して、中国経済は大きな打撃を受ける。それを避ける巧みな戦術といえよう。
欧州の多くの国はAIIBに出資し、中国との関係を深めた。アメリカは出資しないが裏で手を握り、AIIBの成立にはノウハウを提供し、現在、仕事の中軸にアメリカの金融専門家が働いている。日本は、AIIBの融資基準が不明だという理由で出資を拒絶し、安倍さんは中国に対抗するため、世界各国を歴訪しているが、資金力で劣り、原発・高速鉄道・再生可能エネルギー等でも、日本の競争力が優れているわけではないので、心細い。
中国にとって、世界経済を傘下に収めるには、平和が絶対に必要であるから、アメリカとの戦争にならない範囲で、弱い国を脅して経済的に支配しようとしている。中国の実力と野望を軽視してはならない。