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4月16日
AIIBに参加すべき
対外安定求める中国
中国の急速な経済成長は、貧富の格差、環境汚染、貧弱な社会保障等のひずみを生んだ。
農民工の子弟は、都市の極貧層の生活から抜け出せないのに対し、党や国営企業の幹部の子弟は、特権的なポストを保証され、豪華な生活を送っている。
また都市から青空が消え、食の安全性すら失われた。所得格差の固定化と環境汚染によって、深刻な社会不安が広がり、年間、10万件を越える暴動が発生している。外資や民間企業は、コストの上昇、労使関係の悪化、深刻な環境汚染を避けるため、工場を東南アジアの国に移している。
習近平政権は政策の目標を、経済成長から、ひずみの是正と生産性向上という「新常態」へ移行させたが、この目標達成には、まず大規模な汚職の摘発という熾烈な権力闘争が必要である。また環境対策のポイントは、最大汚染源である石炭消費の削減にあり、キー産業である石炭業の縮小が要求される。 国営企業は過剰雇用と過剰設備を抱えており、その整理こそ生産性向上の出発点である。
「新常態」政策は膨大な失業を誘発し、共産党員から国営企業のポストを奪い、賄賂の機会を激減させる。激しい抵抗が発生するに違いないが、中国の生産人口は減少し始め、今後、人口の老齢化が進むから、「新常態」への転換が急がれるのである。
そのためには、安定的な対外関係を築き、習政権が経済組織や産業構造の改革という課題に専念できる体制が必要である。この観点から、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の役割は重大である。アジア諸国は、基本的インフラが不足しており、水道、道路、鉄道、下水が整備されれば、経済は飛躍的に発展するに違いない。東南アジア諸国、インド・パキスタン、イスラム圏の西アジア諸国の経済が成長すれば、中国の外部環境が安定化する上、貿易が拡大する。
中国は4兆ドルの外貨を蓄積し、中国と国境を接する国の交通インフラに融資する力を備えているが、それは相手国の反中的感情を刺激する恐れがあり、また、アジアのインフラ建設需要が膨大であって、中国だけでは応じきれない。
膨大なインフラ需要
ところで、アメリカの金融業は、2008年にリーマン・ショックを発生させ、IMFの政策は1997年にアジア金融危機を誘発した。日本の金融政策は「失われた20年」を生み、いずれも、国際的な信用力が低下した。
中国にとっては、現在、AIIBを国際機関にして信用力を高めると同時に、リスクを分散し、かつ国際金融市場におけるアメリカの支配に挑戦するチャンスである。
アジア経済の成長性に注目して、世界の57カ国がAIIB創設メンバーとなることが確定した。イギリスは、「元」による国際金融取引をロンドン金融市場で吸収すべくいち早く参加を決め、アジア経済を重視するEU諸国がこれに続いた。アジアのインフラ需要は、日本と関係が深いアジア開発銀行の融資能力をはるかに超している。日本は狭い心を捨てAIIBに協力すべきである。