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4月5日
広い観点に立った人材育成
脱時間給を広げるべき
長期雇用の日本的経営では、成長の源泉は人材の育成にあった。大企業は新卒者を採用し、数年の周期で職場を異動させた。
それによって、視野が広がり、社内の人的ネットワークが拡大するので、仕事は質量ともに充実し、また多くの上司に接するから、勤務評定が正確になる。本人は自分の特性を認識し、自然にスペシャリストとゼネラリストに分かれる。
社員は、45歳ぐらいまで、社長を目指して、熱心に仕事をし、技能を磨くので、長時間労働に陥りやすい。しかし、課長や部長など管理職は、役員などの上司から、仕事の業績、部下の育成、健康管理、残業量によって評定される。部下の能力が伸びず、頻繁に病人が発生し、残業が多ければ、最低の評定になる。管理職に対する評価が厳密であれば、過労問題は発生しないはずだ。
理論好きな課長は出世できない。部下との議論に勝っても、部下が意気消沈し、勤労意欲を失うだけである。議論に負け「君の意見はもっともだ。まずそのようにやってみたまえ」と肩をポンと叩けば、部下はすっかりやる気を出し、能力がぐっと伸び、良い成果をあげる。大企業で出世する人は、どのセクションに移動しても、部下の言い分を真剣に聞く人である。
研究開発のスペシャリストは、社長のポストに関心がない。彼らにとっては、会社の仕事は、自分の能力を向上させ、知識を広げる自分のための趣味の仕事であり、残業や残業手当に全く無関心だ。
厚生労働省は、「脱時間給」制度の適応範囲をさらに広げるべきだろう。大手銀行の調査部は、1980年代には、事実上、フレックスタイム制を実施していた。分厚い調査報告の作成には、中断せずに作業すると能率が上がる。調査部長は、部下の執筆作業が深夜に及ぶ時には、銀行の就業規定を無視し、翌日を午後出勤にして、部下が効率的に時間を使えるようにした。その頃、銀行の調査部は、日本で最も強力なシンクタンクになった。
「非正規」を正規社員に
現在、大部分の大企業は、文化人類学者のような多様な人材を育て、海外における大規模な生産・販売に成功し、海外収益が国内収益を上回るようになった。また技術者は、学者以上に時間と資金を研究に投入して、世界的な革新技術を開発している。
しかし、深刻な問題が二つ残されている。その一つは、約2千万人の非正規社員がマニュアルに従う単純作業を繰り返しており、潜在能力を開発できない。最近、流通サービス業では非正規社員を店長や管理職に抜擢する例が散見されるが、まだまだ不足である。企業は正社員の賃金をカットしてでも、非正規社員を正規社員にし、社内教育を受けさせ、創意を持って働ける人材に育てるべきだろう。非正規社員の存在は、国家の損失である。
二つ目は、最近、短期間で転職する人や、短期的な利益を狙う企業が増えた。しかし、生産性向上には、長期にわたって、技能訓練、チームワーク力の強化、製品開発能力の向上努力を続けることが不可欠である。それは、また日本経済が再生する道でもある。