アジア動向

静岡新聞論壇 1月8日掲載文

ドイツ、ロシア、中国の結束

深まる経済・外交的関係

世界はダイナミックな変化を遂げつつあり、ヨーロッパも例外でない。ドイツ経済は内需が伸びず、成長を輸出に依存するようになった。将来の輸出先として期待されるのはEU諸国やアメリカではなく、経済が未成熟のロシアや中国であり、ドイツはこの2国との経済的・外交的関係を深めている。

ドイツは、原油と天然ガスの需要量の約40%をロシアに依存している。ドイツのエネルギー政策は脱原発にあるが、風力発電など再生可能エネルギーのコストが高いので、脱原発政策は、原油や天然ガスへの依存率を高める結果になった。

再生可能エネルギーの技術を高度化して、ロシアへのエネルギー依存度を減らすには、長い年月が必要であるから、ドイツの経済は、当分の間、ロシアがパイプラインを閉めたならばお手上げという状態に置かれるが、ドイツ人は、あまり苦にしていない。

歴史を振り返ると、ドイツは、スターリン・ヒトラー時代を除けば、ロシアと密接な関係にあり、文豪のトーマス・マンは、「ドイツ文化はフランスやイギリス文化よりも、遙かにロシア文化に近い」と述べている。ピョートル大帝はドイツ文化を愛し、ロシア帝国の近代化に努めた女帝・エカテリーナ2世はドイツ人である。ロシア革命の時には、ドイツでも革命気運が高まった。

ドイツにとって、ロシアは昔も今も重要な輸出先であるから、ドイツはロシアの経済発展を期待している。最近では、ロシアを敵対視するアメリカ外交に逆らい、2011年の国連安全保障理事会ではリビア攻撃決議にロシアとともに反対投票を投じ、昨年から始まったロシアに対する経済制裁には消極的な態度を示している。ロシア政府に対してアメリカに同調せざるを得ない事情を詳しく説明し、ウクライナとロシアとの仲裁役を果たそうと努力した。

有利な地位築きたい日本

ところで、ドイツにとって、中国はEU圏を除くと、アメリカに次ぐ輸出先国であり、ごく近い将来、確実にアメリカを抜くと見られている。フォルクスワーゲンとメルセデス・ベンツの2社は、中国市場では圧倒的に強く、世界の巨大自動車企業を遙かに引き離している。ドイツは、フランスやイギリス等のEU諸国より、中国との関係を重要視している。

中国は、2011年に、ドイツと合同閣僚会議を毎年開催することを決めた。他の如何なる国も、中国とこのようなハイレベルの政府間定例会議を開いたことがない。

ロシアは、経済苦境を脱する活路を中国に求めており、昨年、中国と30年間の天然ガス供給契約を結び(現在ドイツに供給しているのと同じ量)、同時に、技術、金融、貿易に関する協力協定を締結した。これによって、ロシアは、パイプラインで結ばれた天然ガスの安定的な売却先を確保し、またシベリア開発を推進できる。

ユーラシア大陸の3大強国は経済的に結束する方向に向かっている。日本は世界経済の秩序が変化するなかで、中、米、ロ、独を相手として、有利な地位を築きたい。

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