アジア動向

静岡新聞論壇 8月23日掲載文

日本の弱みを突かれた領土問題

もはや「怖くない国」に

紛争中の領土は、実効支配している国が、有利であるから、静観を決め込むものだ。ところが、ロシアと韓国は、トップが国後島、竹島を訪れ、日本を挑発した。一方、中国は日本が尖閣列島を実効支配しているので、民間の活動化を上陸させ、紛争地であることを明確にしている。

領土問題は、ナショナリズムを刺激するので、政府が強気な態度をとると支持率が高まる。ロシア、韓国、中国ともに、反政府勢力が強まっており、また紛争領土の領海に賦存するエネルギーや漁業の資源が重要になった。そうした時、日本は怖くない国に変わたので、領土問題を起こす絶好の機会が訪れた。
日本の変化は、第1に、普天間基地問題等によって日米軍事同盟が弱体化し、アメリカは領土問題で日本を支持しないと思われる。第2に韓国も中国も経済力が向上し、日本経済への依存度が減少し、第3に日本の企業は韓国や中国で中核工場を移転したから、反日感情が高まれば、ストやデモが続き大打撃を受けるという弱い立場になった。

第4に、日本の政治は混迷し、領土問題は政局を動かすに止まり、反撃の体制をとれない。第5に、今までの日本は孤立すると、数年間で核兵器を製造するかもしれないという不気味さがあったが、福島原発事故によって、その恐れは全く消えた。

領土問題は解決困難であるが、特に竹島は韓国は絶対に妥協できない事情がある。日本の敗戦後、韓国は約3年間アメリカ軍(連合軍)の占領下に置かれた後、独立を認められた。それは東南アジア諸国が、旧宗主国と戦って独立したのと対照的であって、屈辱の歴史といえる。

その頃、連合軍は韓国漁民を守るため、韓国沿岸を、大量漁法を駆使する日本漁民の禁漁区にした。李承晩大統領は、この政策を勝手に引き継ぎ、沿岸線から100海里を遙かに超えるラインを設定し、これを越えた日本漁船を武力攻撃し拿捕した。日本やアメリカの抗議は無視され、日韓基本条約が制定された65年までの13年間に、330隻、4000人が拿捕・長期抑留され、4名が死んだ。竹島はこのラインの中にあり、それ以来、韓国が実効支配している。

解決には長い歳月必要

竹島が島根県に登録された1905年は、日本が韓国から外交権を奪った年である。韓国はこの漁業ラインを守ることによって、植民地支配していた日本から、独島(竹島)を武力で奪い返し、屈辱の歴史をいくらか晴らしたと言える。知識人からバーで働く女性まですべての韓国人が、竹島は韓国のものだと喧嘩腰で主張するのはそのためだ。

どんな領土問題でも、解決には100年以上の年月が必要であり、十数年毎ぐらいに激しい紛争が発生するものだ。相手国と歴史の共同研究を進めても、その研究会で対立が深まるだけだ。

幸いにも、日、中、韓の3カ国のGDPはEUと並ぶ大きさになり、経済的結合は強いまり、人的文化的交流が広がったので、良識が働き易い。お互いに過度なナショナリズムを押さえることが重要だ。

ページのトップへ