アジア動向

静岡新聞論壇 8月9日掲載文

終わらぬ心理的な戦後処理

「報復」に努める中韓

戦争は戦勝国の報復で終わる。2次大戦の時、ドイツ軍は、ソ連の住民を略奪・暴行・虐殺の地獄図に投げ込みつつ進撃した。ヴォルゴグラードで形勢が逆転すると、ソ連軍の報復が始まった。

大量のドイツ軍捕虜が雪原に放置されて死んだ。ソ連軍はドイツ領で住民に襲いかかり狼藉の限りを尽くした。占領地を隷属国「東ドイツ」に変え、45年間も支配して、国民の富と自由を奪った。戦勝国はやられた以上に仕返しすると、心理的に落ち着き、過去の恨みを忘れ、平和になるようだ。

ところが、韓国と中国は、日本にやられて、「仕返し」してないから、戦後70年近く経っても、心に引っかかるものがある。

日本の敗戦直後、連合国は韓国に政府を創る能力なしと判断して自らが信託統治にした。その3年後にソ連をバックにした北朝鮮と、アメリカ支持の韓国が成立し、それぞれ独立国になった。

韓国人は、日本の植民地時代に、日本語と日本名を強制され、差別と強制労働と搾取に苦しんだ。もし、8月15日に、韓国独立軍が存在し、日本の朝鮮総督府を武力制圧して、統治権を奪取していれば、この新政府は韓国人を差別した日本人を大量に捕え、軍事裁判にかけて、十分に「仕返し」できただろう。

しかし、48年に韓国政府が成立した時には、全ての日本人は祖国に引き上げており、東京裁判では、韓国は連合国ではないので原告席にも着けなかった。韓国も北朝鮮も日本に対して大規模な「仕返す」機会を失った。韓国は、慰安婦問題を取り上げ、世界の世論を反日に誘導するという「仕返し」に努めている。

日本軍は8年間も中国の国内で戦った。やがてアメリカが戦争に加わり、日本の都市を無差別爆撃し、2個の原爆を投下し、日本を降伏させた。中国では、日本の敗戦とともに国民党と共産党の内戦が激化した。200万人近い日本軍は不気味な存在であるから、国民党政府は、日本軍を武装解除して帰国させた。

永久に続く原爆鎮魂祭

東京裁判と南京軍事裁判では、南京虐殺事件の首謀者や実行者を死刑にしたが、1000万人を超える市民の死亡という被害を考えると、それは「仕返し不足」である。中国人が南京虐殺問題を反復して取り上げ、中国船が尖閣列島に平然と侵入するのも、その不足の気持ちがあるからだ。
ところで、沖縄県民は地上戦で10万人が犠牲になった。当時、住民を殺害したアメリカ軍が現在まで駐留し続け、当時戦いを命じた日本政府が現在まで駐留を承認しており、沖縄県民は被害の「仕返し」をする相手が大きすぎた。基地反対運動が唯一の「仕返し」であって、それは永遠に止まらないだろう。
日本の市民は、焼夷弾攻撃と原爆によって、50万人が死んだ。私達はアメリカ爆撃機の乗員の顔が見えなかったので、爆撃は天災のように感じられ、戦争だからやむを得ないと思っている。しかし、原爆だけは許せない。敗戦国でも「仕返し」が必要であり、原爆鎮魂祭を永久に続け、アメリの非道徳を世界に訴えるべきだろう。

ページのトップへ