アジア動向

静岡新聞論壇 11月7日掲載文

宗教をめぐる中国の不安

農村中心に「家庭教会」

中国では汚職が拡大している。2007年以降の5年間で腐敗問題で処分された共産党員は、70万人近くに達した。最高幹部の蓄財総額は1千億円を超え、彼らの子弟は欧米で豪華な留学生活を送っているのに対して、一部の農民は貧しい生活の中で信仰に生きている。

農民工には農村に帰った時、信仰を体験し、沿岸の工場で「家庭教会」を開く人が少なくないという。「家庭教会」にはまだ反政府運動の動きは見られないが、その数は、「政府が公認し、管理しているキリスト教徒」の5倍に達し、不気味な存在になってきた。

中国の少数民族は、宗教と言語によって団結している。イスラム教徒は戒律を守り、毎日5回同じ時刻に礼拝し、毎週金曜日に、モスクに集まって集団礼拝する。断食月には、日の出から日の入りまで断食し、断食明けの日には、族長を中心として一族揃ってご馳走で祝う。彼らの人生は、イスラム生活そのものである。

治安対策は間に合うか

ところで、中国経済は、沿岸地方の成長が限界点に達し、今や、中西部開発という内需依存型の成長に向っている、新疆ウイグル地域は資源の宝庫である中央アジアに通じており、すでに鉄道や高速道路が建設され、また石油化学等の大型工場が計画され、大量な漢民族が移住してイスラム社会を破壊し、仕事の伝達は中国語に変わり、中国語を読めないウイグル人と漢民族との所得格差は拡大する一方である。それとともに独立運動が強まっている。

中国では、18、19世紀に膨張した貧民が立ち上がり、白蓮教や太平天国の乱等、国家の存在を揺るがす巨大な宗教戦争を誘発した。今の政府はその再発を恐れるかのように、大規模な賄賂の摘発や環境対策に乗りだし、愛国教育を深め、治安を強化している。間に合うだろうか。

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