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静岡新聞論壇 2月19日掲載文
「宗教戦争」激化の様相
大国、地域間の対立
最近、アメリカ、中国、イスラム世界、ロシアといった相互に宗教が異なる大国や地域の間で対立が目立っている。歴史的に宗教が関係した戦争は、いずれも悲惨である。
アメリカは、新大陸に聖地を求めたピューリタンが創った宗教国家である。大統領は、就任式で神の祝福と加護を祈り、牧師が祈祷を行い、神から与えられた「世界の全ての国を民主主義にする」という使命を果たそうと努めてきた。ベトナム、アフガニスタン、イラクでは失敗したにもかかわらず、依然として使命に忠実である。
中国では、個人は祖先から子孫へ流れる永遠の生命である「気」の担い手に過ぎない。「気」が通じ合う血縁集団が宗族であって、「天」によって選ばれた皇帝が、数十万人から成ると言われる多数の宗族を束ねて、国家を造ってきた。民主主義制度になると、宗族と人口が分散して、国は消滅するだろう。
中国が三千年近くも、大国の地位を保ったのは、幾つかの能力ある宗族が結束して独裁的な権力を握り、民衆がそれに従ったからである。それは儒教が染み込んだ結果であって、独裁的権力は現在まで続いている。
イスラム世界では、コーランが生活倫理、社会秩序、司法の基本を定めている。それに基づいて、膨大な法体系と法治世界が創られ、個人はこのイスラム法から離れて自由に行動できない。イスラム教徒はウンマと呼ばれる宗教共同体の一員になり、金曜日の礼拝、断食明けの晩餐会など共同生活を楽しんでいる。それは一千年以上昔の生活を基本としているので、進歩や変化を起こさないから、安心した人生を送れる。
ロシアでは、社会主義政権下でも密かにロシア正教が生きていた。ブレジネフ書記長が亡くなった時、彼の妻は遺骸に対して静かに十字を切ったと言う。ロシア正教は、15世紀ごろから独裁政権を支え、社会主義時代を除けば政治権力と一体化した。プーチン大統領が主催する重要な国内儀式にはロシア正教の総主教が必ず同席して、政府の権威を高めている。
不安な時代に突入
20世紀まで、アメリカが覇権を握り、自由と民主主義を世界に布教した。アメリカの経済的影響力が衰えると、中国は、海洋権益を拡大し、同時に、重点国のインフラに巨額な資金を投入して、世界の中心国の地位を狙い、アメリカを脅かしている。
東ウクライナと西ウクライナは、東方正教とキリスト教が接触する場所であるから、実質的な停戦には時間がかかるだろう。東方正教のバックにロシアがいる。
イスラム教の国々は科学進歩が遅れ、20世紀初めには欧米の植民地にされ、宗教指導者と欧米の権力が癒着した。最近、世界のイスラム教徒の急進派は、腐敗した政権や、侵略を繰り返した欧米諸国と熾烈な戦いを開始した。
「イスラム国」は、中東やアフリカの破綻国家内に領地を広げ、アメリカの無人機に対して、自爆テロや人質の公開処刑で対抗している。日本は世界規模の「宗教戦争」への参加に踏み出した。不安な時代に入った。