随想・書評

孫尚清さんの思い出

孫尚清さんは、中国経済が転換を迫られている最も難しい時期に、政策の舵取り役を果たされ、見事な経済成長の礎を築かれました。

孫さんは、大変お忙しい生活を続けられていたにも拘わらず、80年代から、長い間、私と親しくおつき合い下さいました。そのお陰で、私は中国経済の変化を理解できた上に、中国から見た日本経済を知ることができました。

孫さんは、実に丸い人柄の上、私と同じ年であり、また若い頃医師を志したという点でも同じでしたから一層親しみを感じ、お会いする毎に、遠慮なく意見を交換できました。孫さんは、80年代始めには市場経済化の順序とテンポや、国家が市場経済をリードする手段を深く考えられていました。私は、日本における大蔵省の銀行統制政策、通産省も重要産業への融資誘導政策、農業協同組合の機能などについて、ご報告した記憶がございます。

80年代中頃になって、中国経済の市場経済化のテンポが速まりました。日本の経営者に対して、中国経済の変化を理解して貰うために、孫さんにお教え頂き、「路地裏の中国経済」という題の分かり易い中国経済の解説書を作りました。好評でした。

中国経済は驚異的な発展を遂げました。孫さんがご存命でしたら、ご自分が想定した政策の正しさに仰天されると思います。私がご指導賜った馬洪さんと孫尚清さんは、笑顔が大変美しい方です。孫さんを思い出す時、同時に馬さんの笑顔が浮かび、ご両人とお話ししている気分になります。

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